ふぁーみんぐ通信01年12月号
●まだまだマイナーな「環境用語」
私が、バイオマスという単語に出会ったのは、とても早いかもしれない。なんと
19年前の小学校4年生。当時、動物図鑑や植物図鑑などの図鑑を見るのが
大好きだった少年の頃、エネルギーというタイトルの図鑑(学研?)があった。
その図鑑を読み進めていくと私の生まれた年に「石油ショック」とあった。
さらに読み進めていくと「化石燃料に替わって、バイオマスの・・・」、こんな文章
があったことを今でも覚えている。図鑑では、古くて新しい植物のエネルギー
=バイオマス・エネルギーという感じで書いてあった。子どもながら「植物さんの
エネルギーを高度に利用できたら、素敵かも!!」という想像力をはたらかせていた。
バイオマスという言葉は、新聞なんかでは単に生物資源と訳されている。もともと、
それは、生態学の用語で「生物体量」を意味し、植物体が太陽のエネルギーを受けて、水と二酸化炭素により光合成によって炭水化物やセルロースなどを生体内に固定し、蓄積したものをいう。例えば、稲について考えてみると、稲の根、茎、葉、種子などの植物器官の全重量を示し、水分を除いた全乾物量で表現される。
最近では、エネルギー資源として転換・利用できる生物有機体のことを
「バイオマス」と呼んでいる。
いずれにしても環境問題に関心の高い人しか知らない専門用語という感じ
がする。
●バイオマス(biomass)の種類
バイオマスは、太陽エネルギーをストック(貯蔵物)したものと考えてよいのだ。
そうすると、単純に木や草のことだ!と思っていいが、生物系の廃棄物のことも忘れてはいけない。広く捉えると都市からでてくる住宅の木材廃棄物や生ゴミなんかもバイオマスに分類される。
植物系バイオマス:木本性植物(広葉樹、針葉樹)
草本性植物(サトウキビ、ネピアグラスなどの草)
水生植物 :ホテイアオイ、ウキクサなど
海藻 :マコンブ、ジャイアントケルプなど
動物系バイオマス:微細藻類(クロレラなど)
生物系廃棄物:林業廃棄物(間伐小径材、枝、葉、製材廃材、おが屑等)
畜産廃棄物(糞尿)
水産廃棄物(カニの甲羅等)
農業廃棄物(バガス、ふすま、稲藁等)
都市廃棄物(生ゴミ、剪定くず、古紙、建築木材等)
これらに微生物や昆虫や小動物まで含めて、バイオマスという場合もあるが、だいたい
種類としてはこんなもんである。
●バイオマスは、バイオテクノロジーか?
バイオマス・エネルギーという使い方をされているので、自然エネルギーや再生可能エネルギーの1つと認識している人が多いかもしれない。下記のようにである。自然エネルギー(再生可能エネルギー)
・バイオマス
・太陽エネルギー
・地熱
・風力
・波力
・潮力(潮の満ち引き)
・海洋温度差(深海と浅海の温度差を使う)ところが、環境・農業分野でない人にとってバイオマスは、IT(情報技術)産業の次に注目されているバイオ産業の一種だと理解されている。広い意味でのバイオテクノロジーの技術体系は、下記のように生物利用技術と生物模倣技術の2つに大別される。確かにこの定義だと当てはまってしまうのだ。
生物利用技術
・遺伝情報利用:組換えDNA、細胞融合、核・卵・胚操作、タンパク質工学
・増殖能利用 :大量培養、バイオマス
・生体成分利用:バイオリアクター、バイオセンサー
生体模倣技術
・生体成分模倣:バイオケミカル、人工材料
・生体機能模倣:バイオエレクトロニクス、バイオメカニクスバイオマスは、自然エネルギーという観点だけでなく、バイオテクノロジーの一つでもあるのだ。今は、バイテクのマイナス面ばかりが目立ちますが、、、
●バイオマスの利用を促進する環境税とは?
さて、温暖化の主な原因は、二酸化炭素だが、根本的な原因は、化石燃料の使い
すぎがある。太古の昔から地下に眠っていたものを地上で消費して、最終的に
有害・無害な物質を大気中に撒き散らすのが化石燃料である。
元々は、シダ植物などの植物由来だが、石油ができるのに気の遠くなる時間
を必要とする。
生成する時間
石油(原油) 250,000,000年(2億5千万年)
樹木 60〜7年
草 0.5年(半年)
今の私たちが最も使いやすいエネルギーと素材の原料となっているのが、石油
である。それが生成されるのに2億5千万年の時間を費やしている。その生成時
間:1年=1円という環境時間税をつけると、石油は高価すぎて全く使えない。
例えば、100円ショップで売っているプラスチック容器なんかは、この環境時間税
を設定すると2億5千万100円もする。2億5千万年もかかって、ようやくできた石油
を100円で買えてしまう世の中はどこかおかしい。100円で購入したら、未来永劫
、末代まで2億5千万年間、同じコップを使わないと割があわないはずだ。
すぐに捨ててしまったら、太古の地球さんに申し訳ないと思ってもよいのに。。。
木や竹の容器、コップ類がたとえ1000円したとしても、環境的には超低コスト
製品である。でも、既存の産業をひっくり返してしまうこの環境時間税は、到底
採用されないでしょう。(笑)
今まで、石油が使いやすかったのは、エネルギー密度が高く(即時反応性)、
液体で持ち運びしやすい(可搬性)からである。これを木や草で代替するとなる
と、木や草からアルコール(エタノールなど)をつくって、そこから水素を取り出し、
燃料電池(水素と酸素を反応させて電気エネルギーを生み出す電池)につかわ
れるというモデルが考えられる。
早くそのような水素エネルギー時代がやってきてほしいと本気で思っている。
●バイオマスの利用は、エネルギー利用に注目しすぎ!
平成13年度から新たに概算要求された予算(単位:百万円)がある。驚くべき
ことに日本政府も遅ればせながら、バイオマスにお金をつけはじめている。
・経済産業省
地域新エネルギー・省エネルギービジョン策定等事業費補助金 1,719
バイオマスエネルギー高効率転換技術開発費補助金 2,000
・農林水産省
農林業におけるバイオマスエネルギー実用化技術の開発 700
・環境省
地球温暖化防止先進技術実践モデル事業費補助金 150
これ以外にも昨年度からの事業費補助金で拡充したものが多数あるのだ。
この政策には、少々矛盾が生じる。バイオマス利用の大原則をホントにわかって
いるのだろうか?という疑問である。
●バイオマスの利用の大原則は2つ。
一つ目は、「再生産力を越えない利用」である。広大な土地に同じ作物を連作すると土地の栄養分がなくなったり、森林を伐採してまで、作物を植えたりするのは、自然界のルール違反となる。はじめはよいかもしれないが、収穫量が落ち、やがてその土地が使えなくなり、荒野となる可能性が高い。植物系バイオマスにおいてよく考えなければならないポイントである。
それから二つ目は、カスケード(多段階)利用をすることである。国の予算を見てもわかるようにお金や技術や人もエネルギー利用に偏りすぎである。エネルギーとして利用するのは、最後のどうしようもない屑やカスになってしまった資源の有効利用と位置付けられる。その原則を表した「5F」というのがある。
Food(食糧): 健康食品、サラダ油、精油・香料、食品添加物
Fiber(繊維): 衣服、寝具類、自動車部品、断熱材等
Feed(飼料): 油かす、茎加工くず等
Fertilizer(肥料): 炭化(土壌改良剤、水質浄化剤など)
Fuel(燃料): エタノール化、ペレット燃料食糧が一番、付加価値が高く(お金になる)、それから順番に価値が低くなるのだ。最後の燃料が最も付加価値が少ない(お金にならない)。当分、石油、石炭、天然ガス等の化石燃料がなくならない中で、バイオマスを燃料利用して、コスト的に対抗しようとしても少々無理がある。食糧、繊維、飼料、肥料の4つでいろんな製品を作って、利益を上げ、一番最後に燃料にすることによって、有効に利用すること(有効に利用できること)が理にかなっている。はじめから、エネルギー利用だけに焦点を絞って、取り組むとバイオマスはやっぱり採算があわな〜い!と嘆く結果に終わるだけである。まず、素材として何ができるのかを考え、カスケード(多段階)利用のシステムを構築する必要がある。●麻は、カスケード利用の模範的作物靭皮部 衣料用繊維(ジーンズ、シャツ、寝具類、靴下類)産業用繊維(自動車部品、マット、断熱・防音材)木質部 ハードボード、パルプ、麻炭、固形・液体燃料
葉 肥料、飼料、パルプ
花穂 医薬品の原料、香料
種子 健康食品、サラダ油、化粧品の原料
精油 化粧品、食品添加物、香料靭皮部は繊維のところで、木質部というのが繊維をとった後の茎(麻幹)のところである。麻は色々と活用できるかもしれないが、今のところ私自身がお金になっているのが、種子(食糧)の部分である。麻は、1ヘクタール当り12トンぐらいの生産量があるので、エネルギー資源としても有効かもしれないが、お金になるのは、当分先の話である。種子の次に私が注目しているのは、産業用の繊維利用の分野であり、他の国では、億単位を稼ぎ出す企業も出てきている。●木と草の社会を目指して2億5千万年もの悠久の時を経てでてきた資源をアッという間に使ってしまう文明から60年〜半年でできる木や草を使う文明にかえていこうというのが私のポリシーである。私のできるところは、麻の様々な生産物を商品に替え、世の中に支持を得ていくことである。物をつくって、物を売るということは、この不況の時代において極めて、困難な世界である。しかし、明日のためでなく、明後日のためのものであることを地道に伝えていくことが、大切だなーと思う今日この頃である。
以上
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