ふぁーみんぐ通信03年01月号


 麻の産業化の可能性 
〜木と草の経済社会をつくるために〜


<スターピープル2002年夏号より抜粋>


●脱化石燃料文明と麻

 地球温暖化の主な原因は、二酸化炭素だが、根本的な原因は、化石燃料の使いすぎがある。
太古の昔から地下に眠っていたものを地上で消費して、最終的に有害・無害な物質を大気中
に撒き散らすのが化石燃料である。元々は、シダ植物などの植物由来だが、石油ができるの
に気の遠くなる時間を必要とするので植物資源とはいわない。

 
       資源が生成する時間の比較
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石油(原油)       250,000,000
樹木                         607
草             0.5(半年)

今の私たちが使いやすい素材&エネルギー源の代表格の石油。それが人間が使いやすい形で
生成されるのに
25千万年の時間を費やしている。その生成時間が石油価格に全く反映され
ていないのだ。
25千万年かかってできた石油を精製して、加工して、製品に
して、あっという間に使ってしまう現代社会は、どう考えても持続可能じゃない。
 100円ショップで売っているプラスチック容器なんかは、生成時間:1年=1円と
した「環境時間税」を設定すると25千万円もする。そんな貴重な石油製品を100
で買えてしまう世の中がおかしい!!木や竹の容器、コップ類がたとえ1000円したと
しても、環境的には超低コスト製品である。

 今まで、石油が使いやすかったのは、エネルギー密度が高く(即時反応性)、
液体で持ち運びしやすい(可搬性)からである。これを木や草で代替するとなる
と、木や草からアルコール(エタノールなど)をつくって、そこから水素を取り出し、
燃料電池(水素と酸素を反応させて電気エネルギーを生み出す電池)につかわ
れるというモデルが考えられる。

草の中で、衣服、食品、建材、化粧品、肥料、飼料、塗料、紙、プラスチック、
医薬品、燃料などの様々な製品をつくりだせる「麻」(英語名:ヘンプ)は、大きな
可能性をもっている。石油は、中東地域に8割近くの資源があり、枯渇するものであるが、
麻は、沙漠、氷雪原、ツンドラの気候以外は、生育でき、毎年一定量収穫ができる持続
可能な資源である。私は、麻という植物は、木と草の経済社会をつくるための強力な手
段の1つになると考えている。



●バイオマスの利用原則に適した植物

バイオマス(生物資源)には、木や草や農林水産業からの廃棄物など様々なものが
ある。一般的なバイオマスの認識は、自然エネルギーの1つであり、バイオマス・エ
ネルギー利用という意味で使われている。しかし、ここに大きな落とし穴がある。実は、

エネルギー利用は、最後のどうしょうもない木屑や農業廃棄物などのカスを有効利用す
る手段であってもっと付加価値の高い(お金になる!)ところからビジネスにする必要がある。

以下は、付加価値の高い順に並べてある。難しい言葉でいうとカスケード
(多段階)の利用という。5つのFの順番がバイオマスの利用の順番である。

 カスケード(多段階)利用できる麻 (図表にしてください)

 Food(食糧): 健康食品、サラダ油、精油・香料
 Fiber(繊維): 衣服、寝具類、自動車部品、断熱材等
 Feed(飼料):  麻実油かす、茎加工くず等 
 Fertilizer(肥料): 炭化(土壌改良剤、水質浄化剤など)
 Fuel(燃料): エタノール化、ペレット燃料

従って、バイオマスは、「エネルギー」利用の前に「素材」としての
利用を考えなければならないのである。
そこで、私は「麻」に注目したとき、食べ物のビジネスで麻ビールの開発をはじめに手
掛けた。また、多段階に利用できる麻は、他の農作物と比較して産業化しやすい素材で
あることがわかる。


又、パームヤシ油のようにいくらバイオマスがよいからといって、モノカルチャー(大規模
単一栽培)は問題である。輪作や混作、アグロフォレストリーなどの生態系保全の技術を取
り入れ、自然の再生産力を超えた利用をしないというのもバイオマス利用の原則である。こ
の点でも連作(毎年同じ畑で植えること)の障害が少ない麻は、他の農作物より優位である。

●麻の生産も研究も産業化もこれからです。

FAO(国際食糧農業機関)によると1998年では、、、、

コットン    :1826万4千トン(オーガニックコットン推計:約9万1千トン)
ジュート麻  :  360万トン
亜麻      :  64万トン
サイザル麻  :  32万5千トン
ヘンプ(大麻) :   6万9千トン

これから見ると繊維作物としては、ダントツにコットンが多い。コットン独占状態である。
がんばってこれから10年間ぐらいかけてジュート麻を上回るぐらいの需要と供給を生み出さ
ないと大麻産業推進者は、詐欺師だと思われるかもしれない(笑)。

●それぞれの分野では?

【衣料】

高温多湿な日本において「麻」の服は欠かせないものである。オーガニック・コットンと
ヘンプは、アパレル業界においては、二大天然素材として認知されている。但し、衣服は
流行に左右されやすい商品であり、麻もその例外ではない。
1999年には、大麻原料、糸、
織物の合計が
1312トンまで急激に輸入量が増えたが、2000年には941トンに落ち込んでい
る。今のところ
3億〜6億円ぐらいの市場規模である。財布、バック、アクセサリなどの小
物も根強い人気があるが、流行が一段落した今、商品開発力や品質を上げる努力を続ける
ことによって、再び盛り上がると思われる。

【食品】

「麻の実(あさのみ、おのみ)」は、うどんやそばなどの薬味である七味唐辛子の一味と
して入っている。麻の実は、タンパク質と食物繊維と脂肪酸と3つがバランスよく含まれ、
昔から中国では整腸作用の高い漢方薬として使われてきた歴史がある。今風にいえば便秘
解消の効果が高い食品となる。従来難しかった麻の実の堅い殻を剥く技術がドイツやカナ
ダで開発され、加工や料理の自由度が拡大している。クルミのような味がし、大豆のよう
に加工食品ができる麻の実は、新しい健康食品として生活習慣病の予防・改善の効果が注
目されている。日本では、輸入量が
1999年で2000トンほどあり、ほとんどが鳥のエサとし
て流通している。麻の実専門のレストラン「麻」は、
988月から開店しており、今では
麻の実を使ったメニューが多数のレストランで採用される動きになってきている。

【化粧品の原料】

麻の種子(麻の実)から抽出されるシードオイル(麻実油)には、非常に高い保湿効果が
あり、オイルに含まれる脂肪酸がすばやく吸収され、乾燥したお肌をしっとりとさせる。
有名な例として自然派化粧品店「ザ・ボディ・ショップ」は、
9812月から、フランス産
のシードオイルをイギリスで加工したスキンケア商品を日本で販売している

【非木材紙】

現存する最古の紙は、中国で発見された約2100年前の大麻紙である。大麻は1年草で毎年
収穫できるので、同じ面積で木材の
4倍程度の紙パルプを生産できる。木材パルプのよう
に紙質を落とすリグニンを除去する薬品(漂白剤)が少ないため、耐久性、保存性に優れ
た紙がつくることができる。
2000年から日本の製紙会社2社が大麻紙を製造に取り組んで
いる。

【住宅用の建材や自動車の部品】

世界一の木材消費国である日本の住宅は平均36年しか寿命がない。7年〜60年かけて大き
くなる木を利用するならば、少なくとも
100年ほどの耐久性がほしい。そうでなければ、
森林資源の浪費といわれてもしかたがない。これからは麻のような
110日で育つ植物から
50年、100年ともつ住宅をつくることが過剰な森林伐採を食い止める手段の一つになる。

 建材としては、麻の茎をチップ化して石膏と水と混ぜて壁材をつくり、漆喰として利用
できる。また、麻の紡績工場からでてきた繊維くずから断熱材ができる。これは、防腐、
防かび、防虫性があるため、薬品処理不要である。近年、大きな問題となっているシック
ハウス症などにも対応する健康素材である。この断熱材は、吸音性も高いためドイツのメ
ルセデスベンツ車の内装にも使われている。ドイツでは年間売上が
10億円ぐらいある素材
だが、日本での建材や断熱材のマーケット拡大にはもう少し時間がかかると思われる。

 

全体を通じて産業化にはもう少し時間がかかるが、研究や開発に力を注ぐことは決して無
駄なことではないと考えられる。少ない紙面では語り尽くせないところもあるので、産業
化に興味のある方は、次の本を読むことをお薦めする。

「ヘンプがわかる55の質問〜大麻の基礎知識」日本麻協会、2000年、900

「麻の実クッキング〜21世紀の自然の恵み」日本麻協会、2001年、500

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akahoshi@hemp-revo.net


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