ふぁぁーみんぐ通信 07年2月号
●ウワサの国、ニュージーランド(NZ)?
2002年にオーストラリアとニュージーランドがヘンプ栽培を試験的に
はじめたことは、なんとなく知っていた。南半球で現在栽培が確認され
ているのは、南アフリカとチリぐらい。それにオセアニアの2カ国が加わ
ったのだ。
ニュージーランドは、気候は北海道で、面積が北島と南島あわせて本州
ぐらいで、羊が4000万頭いるのに、人間は400万人しかいない。ちょうど
横浜市の人口を本州各地に散らばった感じである。人口密度がとっても
低いのがこの数字から伺える。
羊がたくさん!!
映画のロードオブザリングやラストサムライのロケ地として使われたり、
スローな雑誌で有名になった「ソトコト」が将来住むなら、原子力発電所
のないニュージーランド!と太鼓判を押していたことで、私もニュージー
ランドに住んでみたいかもと思っていたところであった。
それから、2006年8月にニュージーランド政府は、ヘンプの栽培、輸入、輸出
に関する法律を改正し、THC0.3%以下の品種の栽培を許可し、正式に
商売としてすることができるようになったのだ。国がヘンプ産業のために
法律改正する姿勢が素晴らしい!!
今回は、その下見を兼ねて(笑)、ニュージーランドの南島のミッドランド
グループが産官学の集まり「ヘンプ・フィールド・デイ」を企画し、2年前から
ニュージーランドのヘンプを熱く語っていた堀川氏を通じてご招待された
のだ。
●北島のHEMP TECHとワイカト大学
ニュージーランドには、ヘンプの家具やカーテン用の厚手の織布を販売している
HEMP TECHという会社がある。ここはオーストラリアにも拠点をもち、オシャレ
な高級感あるソファやクッションの生地を商品化している。
中国産ではなく、東欧のルーマニア産で、これまでにないヘンプ生地の色の
バリエーションが豊富で、色むらのない染織技術と生地の耐久性があるもので
あった。
ワイカト大学の看板
このHEMPTECHとワイカト大学工学部の共同で2004年からヘンプ繊維を使った複合
素材の研究を実施している。研究体制は、元NASAの女性研究員であったKim氏
(ワイカト大準教授)をリーダーに、Gareth(博士研究員)、Magi(博士研究員、
中国出身)、Alem(博士課程、バングラディッシュ出身)の4名である。
ニュージーランドで生産されたヘンプを収穫後、2日間畑で干し、レッティング
処理(繊維とオガラを分離しやすくするための処理)をしないで、直接、繊維と
オガラを機械的に分離する「グリーン・ディコーディケーター」というやり方で、
繊維を取ったものを研究材料とした。
ペクチンやリグニンを極力減らし、セルロース繊維だけを残すために、茎から繊維
をとったものを酵素処理する技術を確立させていた。(Magi研究員が担当)
過去に報告された論文(注)によるとヘンプ繊維の引張強さは、生育114日の値が
もっともよいと結論づけている。これは、一般的にヘンプは110日で成長すると言
われていることを裏付けている。
研究に用いているヘンプ繊維
複合素材とは、マトリックス(母材)と強化材によって構成されるが、この研究
では、熱可塑性のポリプロピレン、熱硬化性のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂
などをマトリックスとし、ヘンプ繊維を強化材として使った。石油系の合成樹脂
(プラスチック)は、疎水性であり、天然繊維であるヘンプ繊維は、親水性とい
う性質があり、両者は接着しにくい。 接着性の問題を解決するために、
1)天然繊維をアルカリ処理
→ パルプ化して繊維を取り出す工程を経ると必然的にアルカリ処理となる。
アルカリ処理によって結晶度を増加 → 強度が強くなる
アルカリ処理は、10%水酸化ナトリウムがよいという結果であった。
アルカリ処理は、160℃、45分がよい値としている。
2)パルプ化すると水分が多く、これは複合素材としての接着性がなくなるので、
乾燥させている
→ 乾燥には、10分間の脱水工程と48時間80度の乾燥を経ている。
3)プラスチック(PP)にヘンプ繊維を混ぜるためのカップリング剤として、
MAPP(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)を入れる
→ 論文ではPPに対してヘンプ繊維40%、MAPP3%がよいという結果がでている
成型条件温度は180度〜190度
MAPP処理については、天然繊維コンポジットの世界では先行研究のある分野だが、
ヘンプ繊維で実施したのは初めての事例だと思われる。
また、熱硬化性のエポキシ樹脂、生分解性樹脂のポリ乳酸とヘンプ繊維の圧縮成
形についての物性研究も実施している。(Alemが担当)
フランスのAFT社のヘンプ樹脂(PPとヘンプ繊維の30%の複合素材)のデータと
比較して、25から36MPaと引張強度は、同じような値が出ているが、PP単体の
数値がNZの方が低いのでよい値となっている。
NZワイカト大学 ヘンプ樹脂(AFT社)
PP単体 : 23MPa 28
ヘンプ30%混合 : 25〜36 26〜36
また、最新の研究データによると、ヘンプ繊維40%で引張強度が50.5MPa(射出成形)、
ヘンプ繊維56%で引張強度が84.7MPa(圧縮成形)と従来では考えられない強度を実
現している。 これらは、現段階で天然繊維強化樹脂における世界一の数値である。
(Gareth研究員が担当)
日本でもこの手の研究は、2005年から京都工芸繊維大学で、(有)ジャパンエコロジー
プロダクションと共同で実施しているが、ワイカト大学の方が国の研究費を獲得
している面で、日本よりも充実した研究体制であった。(日本も頑張らなければ、、、)
空から見ると広大なニュージーランド♪
●南島のミッドランドグループ
クライストチャーチの南西約80kmに広がる広大な農地にある農業グループが
ミッドランドグループ。15年前の1992年に創業し、オリーブ油、グレープシード油、
ボラージ油などのあらゆる種類の種子油をとるために栽培をしているところである。
産業用ヘンプの栽培実験を2002年に開始し2年目にはその収穫と同時に種子油の抽出
に成功した。ヘンプ種子油つくった商品シリーズを、ヘンプ(HEMP)とα−リノレン
酸を表すオメガ3(Omega3)をあわせた商品名「HEMEGA3」と名づけて、食用と
化粧品をラインナップしている。
今回、ニュージーランドに行った主な目的は、このミットランドグループと政府
が共同で、ヘンプのフィールドデイ(現地研修会)を行うので、それに日本代表団
として参加するためであった。
ミッドランドの看板
ニュージーランドのヘンプ推進ための協力体制は、
Midlands Seed Limited
植物油のための作物生産グループ。本企画を実施したヘンプ推進の中核組織。
Oil Seed Extractions Limited
搾油工場をもち、植物油生産する会社 ヘンプオイルを製造
FAR
ニュージーランドの農業ビジネス研究ために基金を出す団体
Bioplymaer network
再生可能な資源からプラスチック製造を研究する組織のネットワーク
Plant Research(NZ) Limited
ミッドランドによって設置された農業研究開発(R&D)の会社
Newhemeisphere
農産物や健康食品のマーケティング会社 ヘンプオイルシリーズHEMEGA3を製品化
Greenvale Pastures LTD
羊や小麦などを栽培する農業会社
PPCS Limited
ニュージーランドでもっとも大きい羊肉、牛肉などを製造販売する会社
Winslow Feeds LTD
藁束のベイリング(梱包)と輸送システムの農業会社
HEMEGA3は、食用油、ハンドクリーム、リップクリーム、ボディオイル、シャンプー、
リンス、石けんなど11商品のラインナップで、ニュージーランド特産の抗菌作用の
強い蜂蜜であるマヌカハニーとヘンプオイルを組み合せたものである。
現在は、イギリスで販売されて、展示会での評判はとてもよかったとのことであった。
日本でも販売が検討されたが、日本人好みのスキンケアにするには少なくともパッケ
ージをかえた方がよいということで、保留案件になっている。
ヘンプ畑を見るフィールドデイの参加者たち
フィールドデイには、70名ぐらいの参加者があり、日本からは6名の方が参加した。
ニュージーランドでいろんな企業がヘンプに興味をもち、その原料から試作開発を
熱心にしているのが、とても印象的であった。
特に1985年の生産を最後にニュージーランド麻(ハラキキ)の紡績工場の歴史が終わって
いるが、環境問題の観点からこのハラキキをヘンプとともに復活させる試みとかが
面白かった。
また、訪問した農家のヘンプ畑は、約20ヘクタールあり(これだけに日本の全面積の
2倍)、種子用のFinolaという品種を栽培していた。南半球なので、10月に栽培し、
2月末に収穫。ちょうど訪問時期は2月下旬で、あと1週間もしたら、ぐーんと穂先が
のびて、背丈が2.5m以上になって、収穫時期になるところであった。
政府が許可した畑だというわかる看板もあって、日本とはその辺りは大違いであった。
Licenced Hemp Trial Siteという看板
●今後の課題
ヘンプの栽培は、種子用と繊維用によって栽培方法が違う。今までは種子用だけで
あったが、NZでは、繊維用にも市場があるなら、積極的に投資していきたいという
希望をもっている。NZは、自国に市場をもたないので、アメリカ&日本が取引対象
である。よって、その日本の市場のどこにヘンプが求められているかを十分にマー
ケティングする必要がある。
そのマーケティング活動とニュージーランドのプロジェクトの日本の窓口は、
(株)日本ヘンプという会社が担っている。データプレイスというIT会社の
100%子会社として、07年1月に事業を開始したヘンプ専門の新会社である。
B(ビジネス) to C(コンシューマー:消費者)向けの商品や会社はいくつか
あるが、B to B を専門にするヘンプの会社が今までなかったので、その分野
に焦点をあてて営業活動をするのがこの会社の事業スタイルである。
ニュージーランドのヘンプ麻畑(種子油採取用)
まだはじまったばかりであるが、ニュージーランドのプロジェクトを実施するには、
次のような壮大なプランを考えている。
ニュージーランドでの農場から製品化までの一連の連携プロジェトの立ち上げ
1)品種 強化繊維に適した繊維が採れる品種の選抜もしくは新品種の育成
2)栽培 播種時期、肥料管理、収穫時期、レッティング技術
3)加工 繊維とオガラを分離する効率的な一次加工技術の確立
4)繊維処理 アルカリ処理ならば、非木材紙のパルプ製造工場との連携が必要
5)樹脂製造 汎用樹脂及び植物由来樹脂+ヘンプ繊維+カップリング剤を混錬し、
ペレットを製造技術の確立
6)成形加工 ヘンプ繊維強化樹脂を使った射出成形などの成形加工技術の確立
7)市場調査 この樹脂の市場性調査と開発目標となる製造コストの設定
この分野のNZのアドバンテージは、
1)基礎研究の実績:ヘンプ繊維の複合材料に関する基礎的データがある。
2)産官学の連携と研究体制:基礎研究のワイカト大学、
研究開発を専門とするバイオポリマーネットワーク社の
2つの人的資源が利用できる。
3)酵素処理技術→ 研究レポートを取り寄せ中。
これらのプロジェクトに興味あるところを探しつつ、現実的に売上をあげないと
会社として成り立たないので、現在、様々な企業向けヘンプ商材を用意して営業
を開始しているところである。
これらのプロジェクトに興味のある方はぜひお声をかけていただければ幸いである。
(株)日本ヘンプ
http://www.hempjapan.co.jp/
注)K.L.Pickering,etc”Feasibility study for NZ hemp fiber composites”
Journal of Advanced Materials,2005
K.L.Pickering,etc”Optimising industrial hemp fiber for composites”
composites,2006
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