ふぁーみんぐ通信 07年11月号


40年ぶりの麻畳糸復元へ  〜鬼無里通いの巻〜



●鬼無里の麻畳糸復元に向けて

エコロジー畳職人の植田氏の2008年北京オリンピックに向けた柔道畳の復元事業
に参加協力する形で、はじまった長野県鬼無里村(現在は長野市)の「柔道畳復
元教室」。
全部で11工程を40年ぶりに実施する壮大なプロジェクトである。10月13日、14日
に1回目、11月10日、11日に2回目を実施したので、その中間報告をしたい。

とにかく、文献で載っている工程で、書かれていない部分、細かい部分は
実際に復元作業を一緒に体験しないとわからない。
しかも、村人にとっても40年ぶりなので、作業をしながら、「あーだった、こう
だった、こんな風にした!」と思い出しながらの作業である。


●麻煮、オハギ、オカキ

9月24日に会場となる鬼無里の旅の駅のおやき販売会社とお店の「いろは堂」さん、
麻と畳糸製造プロセスが蝋人形で解説されている鬼無里ふるさと資料館の方、3年
連続で、麻はぎ、麻かき、麻績みの活動をされてきた美麻商工会の方、鬼無里に
住む忠兵衛の方々、鬼無里村全村長で、主催団体の信州麻プロジェクト協議会の
会長、そして、私を含めた7名で事前に打ち合わせ。そのとき決まった重要なこと、
「40年ぶりの作業だから、予行演習が必要だ」ということである。

 麻煮

10月のイベントの前日にその予行演習を実施した。
地元の方々と福島県昭和村の織姫さんたち4名を含めて実施した。
麻煮をしたあと、1束分の麻をオハギして、オカキするのに地元の女性4名、織姫4名、忠兵衛2名で必死になってやって終了。この織姫さんたちは、現役で福島県昭和村で、カラムシ(苧麻)の栽培から織物まで、1年間「麻」留学している人たちなので、実は地元のおばあちゃん並みにとても上手。現役生はいいなー。


用意した麻茎10束(1束:8s、両手で抱きかかえるぐらいの量)を次のスケジュールで麻煮。
・10月12日 4束
・10月13日 2束
・10月14日 4束+1束

@麻煮
畳糸の原料となる麻茎は、靭皮部と木質部があり、この2つを分離しないと繊維が取
れない。分離するために高さ2mぐらいの釜に水を入れて沸騰させる。この釜は、美麻
商工会のもので、多くの方に釜がいい!!と誉められた(笑)。

分離しやすいように木灰を加え、鬼無里の麻は当時なら背丈4mを1度に煮ることができ
ないため、ひっくり返して煮る。今回は、背丈が2mぐらいだったが、釜の高さがそれ
ほどないために、つけて70分、ひっくり返して70分間、合計140分サイクルで、麻茎を
2束づつ煮た。

 ひっくり返す

その後、30分から2時間(2時間がよい)ほど水につけて、次の工程へ。
この水につけておいた場所が、会場となった「いろは堂」の奥にある噴水公園の水溜り
で水浸けした。

Aオハギ(麻剥ぎ)
煮た麻を繊維(靭皮部)とオガラ(木質部)に分ける。これは当時、男性の仕事であり、
指で表皮に傷をつけ、指を入れば簡単に皮が剥がれる。
1本ずつやっていくのこと、繊維をまるごと皮を剥ぐ感じ。皮が裂けてしまうと後の
オカキ工程で、麻繊維が絡まってものすごくやりにくくなる。

1日目はそんなコツを知らないで、ただ皮を剥でいたので、繊維が裂けていた状態に
なっていて、オカキがやり難かった。

 オハギ:ベテランになると数本ずつ剥ぐ

Bオカキ(麻掻き)
剥ぎ取られた繊維には、表皮などの夾雑物がついているため、「オカキ板」の上に皮を
のせて、「オカキノコ」(金べら)で、掻きとる。オカキ板は、ヒノキなのは、節がな
く、すべりやすく、適度に板がしなる硬さで使いやすいためである。

この仕事は女性で、当時は藁の上に蓆(ムシロ)を敷いて、さらに座布団をのせたところ
に女衆が並び、お互いに話しながら晩の12時頃まで仕事をしていた。だいたい1日1人で10
00本ほど仕上げた。このようにオカキをした繊維を精麻(セイマ)とよび、特に上等な
精麻を青金引(アオカナビキ)と呼ばれた。

 オカキ:まずは先生の手本から

用意した麻茎が地元のものではなかったので、オカキ作業の金ヘラが動かしづらく、硬い!
とのクレーム。また、麻茎に節がはっきりと見えることや、少し曲がったのが多かったのも
クレーム対象。

茎を用意したのは、私なので「こりゃ地元で栽培復活させないとダメだー!」と心の中で叫ぶ。
なんやかんや文句いいながらも、作業は40年ぶりのことなので、なんだか皆楽しそう〜。

 みんなで作業体験

C日陰干し
オカキをした精麻は、家の中で竹ざおにかけて10〜15本(=1カケ)を一緒に根の方を結んで
引っ掛けておく。1週間から10日間ぐらい干す。栽培していた当時は、麻煮から日陰干しの実
施時期は9月中旬から9月末であった。

イベント当日は、長野県の郷土研究の方のバスツアー70名がいて、一時的にたいへんな人だかり。
それと隣では、鬼無里商工会の祭りがあったので、演歌が聞こえてきたり、屋台がならんでいて、いっぱい
人がいて、村中の人に「懐かしい〜」とともに「昔はこうだった!」という話をたくさん
いただいた。

 オウミ まずは麻を引き裂く

●オウミ

さて、次に11月に実施したのが、麻績み作業。
麻績みには、績んだ麻をいれる竹製の籠、オボケが必要となる。ちょうど隣の旧・戸隠村に
オボケの籠を編める方がいるので、新品を5個ほど発注済み。この日には間に合わなかった
けど、次回12月にはお披露目予定。
11月中旬は、すでにかなり寒いので、鬼無里ふるさと資料館の研修室にストーブ2台を用意
した。
 みんなでオウミ

Dオウミ(麻績み)
干していた精麻を5〜6本一緒に根の方で結び、それを輪のように丸める(手ガラにする)。
次に手ガラを水に入れて精麻に水分を含ませた後、今度は水をよく切る。手ガラを解き、1本
ずつ取り出して手で1.5mm程度の幅に裂く。裂いたものの端と端をつないでいく。このようにし
て績んだものを、次々とオボケ(竹で編んだ籠)に溜めていく。ある程度溜まったら、績んだ
精麻を煮えた湯に浸す。

オウミは、昭和村や同じ長野の麻織物の文化財である「木曽の麻衣」のやり方と同じやり方
であった。おばあちゃんの40年ぶりとは思えない手つきと比べて、はじめての方は、その原理
と方法を手取り足取り教わりながらの体験。

オウミしながら、よくよく話を聞いていると、
オウミ→麻撚り→糸合わせ→寒晒し は12月から1月にかけての冬の間の連続した作業であり、
11月にオウミなんてしたことない!ということであった。体験企画とはいえ、復元作業の
日程設定にミスがあった。
私は「来年は、12月にしかしませんよ!」と心の中で固く決意した。

 つくられた糸 麻織物用よりかなり太い!

●いろいろいる参加体験者

2001年から毎年、なんらかの形で麻の伝統工芸の作業体験企画をしているが、その参加者の
バックグランドが非常にユニーク。今回の麻畳糸復元に関しては、福島県昭和村の織姫、
上越の麻績みの会の人、地元の染織家、越後上布研修生出身の方、近江上布(滋賀県)で
働く人、卒業論文で大麻を取り上げている学生という職業柄、参加動機の強い方がいた。
また、そうでない地元の方や東京などの遠方の方など様々な職業、年齢、男女関係なく、
参加している。

多くの人に共通しているのは、麻に対する強い想い!
参加者の熱心さが、先生役をしている地元の方に心地よい影響を与えているに違いない。
伝統技術の体験も面白いが、参加者同士の交流もさらに面白いのが魅力的な企画である。
(自画自賛)

参加者は、1回単発の方も受付けているので、興味のある方はぜひ来て欲しい。

 人だかりができた。。。

●次回以降の作業

12月は、11月の続きの麻績みを実施。それとそれ以降の工程の機械のデモンストレーション
を実施する。なんせ40年ぶりに機械を動かすので、動かない場所を特定しなければ
ならないのだ。修繕して来年の最後のイベントに間に合わせなければならない。

Eオヨリ(麻縒り)
績まれた精麻は、平均的にヨルために糸より機を掛ける。

F糸合わせ
畳糸にするために合わせ機を用いて、よられた糸2本が一緒によじれて1本の畳糸となる。糸の端
を切断するとちょうど畳糸1本の長さ(5尺2寸=約150cm)になる。糸合わせは1回で100本。
これを6回やって600本(筋)が1本と呼び、これを24本あわせて、大結束=畳1丸=1万円
(昭和30年代)となった。

G保存
乾燥しないうちに、250〜300筋ぐらいをまとめて、穴ぐらに保存しておく。

H寒晒し
糸合わせされた糸を零下10℃ぐらいの天気のよい朝、日の出前(朝5時)から2時間ほど、雪の上で
晒す。朝日が出てきたら、今度は、針金や木の棒に1本ずつ引っ掛けて日光に干す。すると今まで
青がかった糸が純白になる。この糸を凍糸(コオリイト)という。合計4時間ほど干して、午前9時
までにはしまう。

Iヤジメに掛ける
寒晒しされた糸をヤジメに掛けて、糸を引っ張る。1週間ほど引っ張っている。こうしてできたも
のシロク(白い糸の略名)という。

J結束
シロクの600筋を1本(小結束)、それを24本で1丸(大結束)にまとめる。

寒い鬼無里ですが、地元の方は温かい!
そんな鬼無里にぜひ来てください。(麻畳復元の活動にぜひご参加を!)

ちなみに、この技術をすべて習得して後継者となりたい人も募集しています(来年度事業ですが)。

 皆様の参加をお待ちしております!!

<次回以降の予定>
12月9日(日) 麻績み、麻撚り(デモ)、糸合わせ(デモ)
1月29日(土)、30日(日) 麻撚り、糸合わせ、寒晒し

以上

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