麻紙(まし)〜世界で最も古い紙〜
麻の繊維を原料とした紙のことです。西暦105年に後漢の蔡倫が、樹膚のほか
麻頭(まとう)、敝布(へいふ)、魚網を原料として紙をつくった、といわれています
が、麻頭、敝布、魚網はすべて麻が原料なのです。
麻は古代紙の主要原料であり、蔡倫に先だってつくられていた前漢期考古追
跡出土の紙も原料はすべて麻の繊維です。したがって、麻繊維を原料としてま
ず紙がつくられたといえるでしょう。
麻を製紙原料とする際、蔡倫が敝布、魚網を用いたと記録されているように、生
の繊維を処理するよりも、衣料などとして用いたあと古くなったもの、麻布のぼろ
を再生する形で製紙原料としたことが多い。
『延喜式』(えんぎしき)に記された製紙工程で、布と麻が別個に記されているが、
布は麻布のぼろであり、麻は生の麻を処理したことを示していると考えられます。
中国の技法を比較的忠実に継承した西欧の手漉(てすき)紙は、大麻(たいま)や
亜麻(あま)のぼろ布を主要原料としています。
ところで、正倉院文書には、麻紙のほか上麻紙、黄麻紙、色麻紙、短麻紙、長麻
紙など、多種類の麻紙がみられ、奈良時代には穀紙(こくし)や斐紙(ひし)より
麻紙が優勢でした。
しかし、平安時代には穀紙の生産がふえ、平安後期には紙屋院(かみやいん)でも
麻紙がつくられなくなりました。麻紙は紙質がやや硬く紙面がざらざらして筆写しに
くい点があり、コウゾにくらべて原料が処理しにくく、しかも入手難となったからです。
<参考> 2kgの原料から紙になるまで(延喜式、927年より)
楮(こうぞ) : 10日間
大麻(たいま): 32日間
こうして麻紙は日本の製紙史から消えていたが、内藤湖南博士のすすめで福井県
今立町の名紙匠岩野平三郎が大正十五年(一九二六)に復元して、日本画用紙と
しての販路を開いたのをきっかけに麻紙という分野が生き残っています。
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野州麻紙工房では、いくつかの種類がある麻の中でも大麻(たいま)にこだわって
和紙作りをしています。
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