野州麻とは?


栃木県で栽培されている大麻(Hemp)のことを昔から「野州麻」 (読み方:やしゅうあさ)といいます。
足尾山山麓は、今でも日本一の野州麻の産地です。大麻の繊維は強いことから、織物やロープ、麻の実は、食品や油など多方面で利用されていました。
しかし、戦後、ビニールやナイロンなどの化学繊維の普及により野州麻は、年々減少と途をたどっていきます。
現在、数少ない麻の栽培農家である大森氏によって、野州麻が「灯り」となって、新しく生まれかわろうとしています。

●大麻の基礎知識

ヘンプ(Hemp)とは、日本語で大麻(タイマ、おおあさ)という植物のことをいいます。アサ科の1年草で、雌雄異株の双子葉植物であり、学名を”Cannabis Sativa L”(カンナビス・サティバ・エル)といいます。成長すると約110日間で高さ3〜4mに達し、茎の直径は2〜3cmとなります。

原産地は中央アジアと考えられ、現在では世界各地に分布しています。「麻」という言葉は、日本では古くから大麻のことをさしており、広い意味では、大麻に類似した繊維を取る植物やその繊維のことをいいます。同じ「麻」という文字を使う植物には、亜麻(アマ)、苧麻(チョマ)、黄麻(ジュート)、洋麻(ケナフ)、マニラ麻、サイザル麻などがありますが、植物学的な類縁はありません。



●日本での大麻の歴史

今日私たちが最も日常的に着ている衣服は木綿(コットン)です。ところが、歴史的に見るとかなりの長い間、「麻」と呼んでいる素材から作られた布を着ていました。

最も古いもので縄文時代の鳥浜遺跡(約1万年前)から大麻繊維や種子が発見されています。7世紀の日本では、律令制といわれる制度が確立され、「租・庸・調」という3種類の税が定められました。毎年、各地方ごとに絹や綿などの物産を納める「調」の中には大麻からつくられた麻布もあり、重要な税の一つでした。奈良時代に書かれた「常陸風土記」「播磨風土記」「出雲風土記」「大日本史」などには日本各地で栽培されてきたことが記されています。

8世紀中頃の歌集「万葉集」には麻の歌が55首あり、麻栽培や麻織物の作業過程が詠まれています。江戸時代、庶民の衣類は大麻や苧麻などの「麻」から木綿と変わっていきました。木綿は保湿性、肌触り、染色の鮮やかさ、加工工程が少ないという面で麻よりも使いやすい素材でした。                                                                
 しかし、麻の用途は広く、繊維は、高温多湿な日本の夏に欠かせない麻織物になり、畳の表地(畳表)の縦糸、丈夫な魚網や釣り糸、蚊帳、下駄の緒などに使われていました。また、繊維を取った後の麻幹(おがら)は、明かりを燈すたいまつや携帯用暖房器具のカイロ灰の原料に使われ、種子は食用、照明用の燈油になり、根や葉は薬用として利用されていました。

●世界の大麻の歴史

 一方、海外でも古い記録によれば紀元前2800年前まで溯ることができ、大麻の繊維を織物に、種子を食用に使われてきた歴史があります。14世紀の大航海時代、イギリスやスペインでは、耐水性に優れた大麻繊維をロープや帆布に使った船団がたくさんありました。16世紀、アメリカの植民地でも大麻の役割は重要で、新規移民に対して政府が大麻栽培を奨励していました。アメリカの初代大統領になったジョージ・ワシントンは大麻を栽培し、アメリカ独立宣言の草稿は大麻紙に書かれていました。

 しかし、背が高くて茎の固い大麻を栽培し収穫するには多くの労働力が必要でした。そのため、18世紀になり便利で安いサイザル麻やジュート麻、マニラ麻などの繊維が流通するようになりました。大麻糸は綿糸になり、羊毛や亜麻が布製品に利用され、木材からパルプを製造するようにもなりました。    


当時の大麻種子は繊維を加工した後の副生産品の扱いであったが、徐々に大麻繊維が廃れるという歴史の変化に沿って忘れ去られていきました。1930年代後半、アメリカでマリファナが禁止されたことで大麻栽培そのものまでが厳しく取り締まられるようになりました。第二次大戦中に限って海外からの繊維輸入の道を断たれたアメリカとドイツ国内で軍服や艦船のロープやパラシュートなどのために一時的に栽培された時期もありました。
 しかし、1945年以降、化学合成繊維の使用の増加に伴い、大麻などの天然繊維の利用は大幅に減少しています。大戦後も大麻栽培が続いたのは旧ソ連、東ヨーロッパ、中国、日本などでした。

●大麻再発見
 1980年の終りから90年代始め頃になって、西側諸国では改めて大麻が見直されはじめた。多様な用途があって環境にやさしい作物として書籍等で紹介されたのをきっかけに、大麻繊維やボディケア商品の需要が高まってきたのです。ヨーロッパでは、目新しさと補助金が手に入ることが手伝って大麻を栽培する農家が増え、栽培合法化にまでいたった国もいくつかでてきました。

 よく言われるような大麻栽培がマリファナの生産や使用につながるという懸念は、具体性に乏しいことです。なぜならば、産業用大麻の向精神作用成分THC(テトラ・ヒドラ・カンナビノール)は極微量に品種改良してあるからです。THC 濃度の非常に低い産業用大麻を吸って快感を味わいたいと思っても、そのような効果は全く期待できないのです。

カナダおよびEUの法律で栽培が許可されている大麻の品種は、開花直後の花穂でTHC含有量が0.3%以下のものに限られています。ちなみにマリファナ用の大麻には3〜20%のTHCを含みます。また、産業用大麻とマリファナの栽培形態は異なるため産業用を装ってマリファナを栽培することはできません。


 但し、日本では、大麻取締法によって規制されており、栽培には都道府県知事による免許許可が必要です。今でも許可された農家によって、大麻の繊維が神社の鈴縄、注連縄、弓道の弓弦、古典芸能の楽器、横綱の化粧回し、花火の助燃剤などのごく限られた用途につかわれています。
品種 薬用型 繊維型
利用部 花穂 葉 種子  茎
THC 重量比2〜6% 重量比0.3%未満
栽培法 枝をたくさん出すように
室内栽培が多い
株間を空けないで密植する
ほとんどが露地栽培
用途 <医薬品>
鎮痛剤、制嘔薬、緑内障治療薬、
神経性難病薬など
<嗜好品>
ソフト・ドラッグとして
マリファナ、ハッシッシなど
<産業利用>
衣服、化粧品、食品、紙、建材、塗料、
プラスチック原料、エネルギーなど
<伝統工芸>
麻織物、神事用、結納品、花火、弓弦
屋根材など
日本 大麻取締法により医者の処方、患者の使用が禁止されている 都道府県知事の許可免許なしには栽培できない
アメリカ 連邦法では使用不可だが、州によっては医療目的に限定して認めている 連邦法では栽培不許可だが、いくつかの州で栽培実験をしている
EU 一部の国では個人の所持は罰せられない
THC0.2%未満の品種ならば栽培できる


大麻という植物は、品種によって、利用部、栽培方法、用途が全く異なります。
栃木県では、1982年から低THC品種のトチギシロを栽培しています。
これは当時のヒッピーカルチャーの象徴となったマリファナ欲しさに都会の若者が大麻を盗む行為
を無くすために開発された品種です。

野州麻とは 工房の人 作品展 展示会 麻紙づくり
麻紙づくり体験 麻挽き体験 麻畑より 麻畑より2