ふぁーみんぐ通信01年6月号

オーガニック・コットンとヘンプ
〜二つの自然素材の巻〜




●コットンの服を着ているだけで環境破壊に貢献


今日、私たちの着ている服の半分以上が木綿(コットン)である。
コットン100%というとナチュラルな感じがするが、これは全くのウソである。結論か
らいうと綿栽培は、農家の体を蝕み、土壌汚染と水不足を招き、農地の荒廃をもた
らしている。普通の農産物ならば、口に入れるものなので、問題を認識しやすいが、
衣服となると、自分とは異なる世界の出来事として無関心なままになってしまう。

コットンの栽培は、全世界の農地面積でたったの2%しかないのに、農薬使用量の
26%を占めている。アメリカに限っていえば、全農薬の50%近くになる。
 
たった一つの農作物でなぜそんなに大量の農薬が必要なのか?理由がよくわからない。
そこで、色々と調べてみると、、、

コットンはとてもデリケートな作物らしく、種には、あらかじめ虫食いされないよう
防虫剤を散布し、耕す土壌には、化学薬剤・肥料により土壌消毒・土壌改良をする。
さらにコットンを育てながら、雑草を除去するために除草剤を散布、コットンの葉に
つく虫を駆除する殺虫剤を散布する。

収穫時には、人工的に葉や茎をからさないと、葉の葉緑素が収穫時にコットンに
ついてシミになってしまうので、枯葉剤を飛行機から空中散布する。なんとベトナ
ム戦争で使用した枯葉剤!

収穫した後に紡績をするときにも補助材として化学薬剤を使用。それから、それから、
加工には、化学糊、漂白剤、化学染料、防腐加工剤、柔軟仕上げ剤など様々な化
学薬品で処理する。当然、工業排水が大量に出されている。環境基準を守るため
に薄めて流してしまうことが問題。薄めりゃいいっていう問題じゃないと思うが。。。

●農薬を甘く見てはいけない。

最近では、自然環境中に分解されやすく、特定の生物のみに特化した農薬、天然
成分を利用した農薬などがあり、以前より安全性は高い。しかし、綿栽培の場合、
主に除草剤・殺虫剤・枯葉剤には、塩素化合物・有機リン酸・ピレスロイトなどを使用
しており、それらは、大地に残留し河川や海の水中の生き物や動植物・人間にも
環境ホルモンとなり害を与えている。

また、全世界で毎年2万人が農薬事故で死亡し、その疾病患者数は、毎年300万人
とされている。コットン農家は、農薬使用量、回数、種類(防虫、除草、殺虫、枯葉剤)
が多く、農薬使用時による事故の確率もその分高いのが現状である。

それからアメリカでの報告では、
がんや障害児出生、野生有毒性を検査しないで、現在市場で流通している
殺虫剤の数:400
殺虫剤の中で動物や人間にがんを引き起こす有効成分の数:107
その中で現在使用されているもの:83

カリフォルニア州で確認された地下水汚染の最大の原因:農業用化学薬剤
アメリカで地下飲水が汚染されている割合:50%
E.P.A.(米国環境保護局)によって指定された最も有毒性の高い殺虫成分:アルディカーブ
1970年から1994年までにコットンに使用されたアルディカーブの割合:85−95%

●アラル海を消滅させるコットン

旧ソ連の3分の2のコットン生産を誇っていたウズベキスタンという国がある。
コットンは、コットンボール(綿花の部分)を大きくするために大量の栄養分と水を必要と
する。そのため、この地域では、アラル海や周辺の河川から農業用地の灌漑施設をつ
くってきた。
 しかし、コットンの栽培が、かつて世界第4位の大きさをもったアラル海を干上がらせ、
農薬の蓄積によって汚染された広大な土地をもたらしたのである。
 コットンは、国際市場の価格に大きく左右され、一昔前ほど換金作物としての価値は
かなり低下している。

●オーガニックコットンとは?

前述のような問題により、1980年後半からオーガニックコットンが注目されたのである。
「オーガニック=無農薬有機栽培=農薬を使わない、堆肥や家畜の糞などの有機肥料を
使う栽培」と考えると大袈裟にオーガニックといわなくても昔ながらの栽培方法のことであ
る。先ほどの栽培と比べると

種     :何も使用しない。
土壌   :有機土壌で有機堆肥を使用。
生育期  :手作業による除草および天敵益虫による害虫駆除。
収穫期 : 水路封鎖などにより自然に枯れさせる。
紡績   :蜜蝋、小麦粉、菜種油、果実汁の使用。
加工   :温水と天然石鹸での加工。

オーガニックコットンの定義は、「有機栽培認定基準に従って、化学物質を3年間使用し
ていない畑で、一切化学物質を使わないで栽培され綿花のこと」であり、農薬、病虫害
などに関しては決められた範囲で対応を取っている。各国の認証機関によって、農場や
工場で厳しく検査され、合格したものだけがオーガニックコットンと名乗ることができる。

価格的には、農薬付けコットンの1.5倍〜2倍、茶綿や緑色した綿などのカラードコットン
は、4〜5倍の価格差がある。

●コットンは、一つではない。

コットンができるワタは、アオイ科ワタ属の1年草である。もともと木だったものが1年草
に改良されたと言われている。その証拠?にワタとワープロ変換すると「棉」「綿」とで
てくる。(漢字は素晴らしい!)

ワタの品種は数えきれないほどあるが、大きくわけて旧大陸種と新大陸種の2つがある。

旧大陸種 G.herbaceum (ヘルバケウム) :シロバナワタ
       G.arboreum (アルボレウム)  :インド綿、日本綿(和綿)
新大陸種 G.hirsutum (ヒルスツム)    :アップランド綿(米綿)
       G.barbadense(バルバデンセ) :エジプト綿、シーアイランド綿など

現在、栽培されているコットンの90%がアップランド綿、5%がエジプト、シーアイランド
綿、その残りがインド綿となっている。主な生産国は、アメリカと中国である。

●オーガニックコットンとヘンプの関係

アパレル業界は、環境問題の深刻化と環境意識の高まりをうけて、1990年代前半から
オーガニックコットン、1990年代後半からヘンプを取り扱っている。
 この2つの自然素材のミックスされた服なんかは、私のお気に入りである。

ヘンプは、雑草や害虫に強いので除草剤や殺虫剤は必要としない。また、トウモロコシ
や小麦との輪作に適した作物なので、土地の有効活用ができる。
1トンの繊維を得るときのエネルギー消費量で比べるともっとわかりやすい。
農薬漬けのコットンが25.2GJも必要なのに、ヘンプは、8.2GJでよい。実に3分の1のエネルギーで生産ができるのである。
 
ヘンプには、わざわざ「オーガニック」という冠をつけなくてもオーガニックなものなのである。
 
●ヘンプは、意外と生産量が少ないな〜。
 
FAO(国際食糧農業機関)によると1998年では、、、、
 
コットン    :1826万4千トン
ジュート麻  :  360万トン
亜麻      :  64万トン
サイザル麻  :  32万5千トン
ヘンプ(大麻) :   6万9千トン

これから見るとダントツにコットンが多い。コットン独占状態である。
オーガニックコットンは、コットン市場の0.5%程度といわれているので、それを加味すると

オーガニックコットン:約9万1千トン!!! 

上記の繊維作物たちと比べるとヘンプより生産量がある程度である。
現実的には、オーガニックコットンもヘンプも、これからの作物であり、量的な確保から
いえば、ヘンプの方がやや有利と考えられる。なぜならば、オーガニックコットンを育て
る手間に比べると麻は、雑草や害虫に強いため、栽培の管理が手間にならないからである。

残念ながら、今までヘンプの紡績の適性があまりよくなかったため、亜麻や
苧麻などの麻類よりも衣服に使われてこなかった歴史があるが、最近の技術でようやくクリアしてきている。

●日本の暑苦しい夏には麻でしょう〜。

なぜ、綿よりも麻が涼しい感じがするのか?理屈はよくわからなかったが、
夏には麻よいと昔からされてきた。岩手県の民俗や風習を記した本によると
「夏、旦那に木綿を着せる嫁はダメだ」という話があるぐらい麻がよかったらしい。

麻の繊維が夏にいい理由はまとめて3つ

・熱伝導率がいい。麻0.63、綿0.54、毛0.37
・ヤング率(繊維の硬さの基準)が高く、衣類にシャリ感、張り、通気性があるから
・ルーメンという繊維の中心にある細長い空洞(中空腔)があるから

これらを兼ね備えると熱を逃し、汗をすぐに乾かせ、布の肌触りとあわせて清涼感がとてもよいのである。

最近、スーパーの衣料売場にいくとヨーロピアンリネン(亜麻)の麻のカッターや
ポロシャツとあわせて、「ヘンプ」が55%、コットンが45%の混紡製品が売っている。
今日も思わず買おうと手を伸ばしたら、Mサイズ、LLサイズがあるのに
Lサイズがな〜い! どうやら少なくともその店では、ヘンプ衣料が売れているらしい。
オススメのヘンプ衣類(既存のブランドものでもいい)があれば誰か教えてください。

 
●参考
 
日本テキサス・オーガニック協会のパンフレット
なぜ木綿?  綿製品の商品知識 著者:日比 暉
コットンの世界  著者:馬場耕一
 
 
以上






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