ふぁーみんぐ通信02年10月号
             野州麻紙工房との出会い 〜工房1周年の巻〜


●だれかいませんか?

ちょうど3年前に「麻」の可能性にであってから、生産農家にいって麻畑を
みたい!と思っていた。最近、栽培をはじめた人ではなくで従来から生産
している農家が多い栃木県を希望していた。01年の3月にNHKで栃木県
の麻農家が放映されていたという情報にわくわくした。
 また、同じ時期に麻工房をオープン予定という新聞記事も偶然に入手
していたのだ。

 アウトドア雑誌「ビーパル」に連載して、それが本になった「天然素材
の生活道具」。この本はすごく面白かった。

椿油、キャンドル、紙幣、鉛筆、バット、ボタン、ワサビおろし、フノリ、
蚊取り線香、、、という生活道具をカラー写真で取り上げながら、
天然素材のよさと風前の灯火の状態(後継者いない・採算が合わない)が
書いてある本である。

この中に下駄という項目の中で赤羽さんという麻農家が掲載されていたが、
誰かの紹介でもないとどうやって訪れたらよいのやら???と考えていた。


●師匠にヘンプ55の本が郵送される

私が所属しているバイオマス産業社会ネットワークの事務局からすごい
情報が入った。「麻農家の人がうちのところで修行しているから
ヘンプ55の本を2冊郵送しておきました」
ちょうど、今の野州麻紙工房の大森氏が熊本の紙漉き工房で修行していた時期
だったのだ。

後から聞いた話だが、このとき大森氏は、師匠に「これ読んどけ」とヘンプ55の
本をいきなり手渡され、びっくりしたそうだ。「麻農家より麻のことを知っている人
がこの世にいる・・・・・????」

この本での出会いを通じて、01年4月にいつものメンバー(かしかし:奈良晒・
麻挽き伝統技術後継者候補、みかちゃん:大阪のヘンプ・レゲエ雑貨屋オーナー)
で大森家を訪問したのが最初の出会いである。


●野州麻紙工房オープン記念、紙漉き企画

01年10月に工房がやっとできるというお知らせを聞いて、自分だけ体験するのは
もったいないので、紙漉き体験を企画した。普通、和紙は、こうぞ、みつまたと
呼ばれる原料からつくるが、ここは、麻でつくるのだ。

麻の繊維を取る段階でたくさんの麻垢(おあか)という副産物が大量に出る。
昔なら肥料なんかにつかったのかもしれないが、麻紙に変身させて新しい
命を吹き込んでいる。そんなことを実践する工房である。

その麻紙づくりの簡単な工程は、
適当な大きさに切る→煮る→水洗→漂白(天日乾燥)→
叩く→漉く→乾燥

私たちは、叩くと漉くを体験した。
この叩く作業がたいへん、たいへん。和紙原料としてポピュラーな「こうぞ」ならば
2時間も木槌で叩くと繊維が毛羽立って、紙を漉くときに絡みやすくなるのだが、
麻は、叩いても叩いても、一向に繊維が毛羽立たない。日本最強の繊維といわ
れているのは知っていたが、体験すると腕と手首でそれが実感できる。


●麻紙(まし)は、世界最古の紙
 
 紀元105年に中国後漢の蔡倫が書写を用途とした紙を発明したのが、麻紙であった。
麻のぼろ布などを原料にしてつくっていたようだ。日本でも奈良時代の正倉院文書には、
麻紙のほか上麻紙、黄麻紙、色麻紙、短麻紙、長麻紙など、多種類の麻紙がみられる。

しかし、平安時代には穀紙の生産がふえ、平安後期には紙屋院(かみやいん)でも
麻紙がつくられなくなっている。麻紙は紙質がやや硬く紙面がざらざらして筆写しにく
い点があり、コウゾにくらべて原料が処理しにくく、しかも入手難となったからである。

『延喜式』(えんぎしき)に記された製紙工程では、約2キログラムの原料から紙になる
までの日数は、

こうぞ:10日間
麻  :32日間

となっている。これを見ただけで、麻紙がいかに時間がかかるものかよくわかる。
野州麻紙工房は、この手間のかかる麻紙を復活させ、しかも麻100%にこだわって
製作しているのである。


●ついでに洋紙も、、、麻紙GA


和紙が野州麻紙工房、洋紙は紙問屋の(株)竹尾が販売している。その名も「麻紙
GA」:あさがみじーえーと読む。中堅の製紙メーカーである三島製紙(株)製である。
説明文を抜粋してみると、、、

hempを50%配合して、麻の繊維の特徴を最大限に引き出し、底艶のある白さ、品
を紙に持たせた。蛍光染料やブルーイングは一切行わず、高白色度と高い不透明
性を備えるばかりか、用紙の奥から白さが感じられるようになっている。

風合いはhempの持つ荒々しさを細かなテクスチャーとして残し、そのテクスチャーを
残して印刷適性を持たせたノンコート仕上げとしている。用紙の地の白さが4色を引き
だたせるように設計してある。

さらに高級本文用紙にした時に自然に頁が開くことができる柔らかさを備える。
表面には麻の特徴を持ち、紙は柔らかく、品と白さと不透明性をナチュラルに追求した。

(株)竹尾 03-3292-3621

 http://www.takeo.co.jp/


●麻紙と麻の実パン


工房の敷地の隣には、両親が経営する「ぱんとまいむ」という天然酵母の
パン製造直売所がある。絶対に麻の実パンをつくって欲しい!!と思って
いたところ、1斤:280円の安さでめちゃうまい麻の実パンができていた。

多いときは1日に50斤も売れる売れ筋パン。地元でもなじみのある麻が
パンになったことで人気があるのかもしれない。他にも私の好きなメロン
パンやカマンベールチーズパンなどはオススメである。

息子夫婦が和紙、親夫婦がパン、共同作業に麻、蕎麦(そば)、米の農作業
という役割分担でやっている。同時に和紙とパン工房を開設したおかげで
忙しく、家族団らんが減り、分裂気味?なんて冗談を言ってくる。私は、
ここの家族のファンになり、昨年以降、1ヶ月半に1回のペースで栃木通い
がはじまった。


●ファンクラブのホームページをつくる

野州麻紙工房の場所で行ったワークショップや和紙の作品がたくさん
掲載されたホームページを自分のところに開設してみた。大森氏のつくる
ランプシェードはとても素敵!。「素敵だと思うなら買ってください」
と脅迫されそうだけど。。。

スピニングパーティという糸作り・織物づくり大好き人間が集まっている
展示会に昨年と今年の2回連続で出展している。従来、麻糸の原料が入手
できにくかったこともあって、羊毛、絹、綿、カシミア、ラクダなどの糸
屋さんたちに認知度が全くなかった。

それが、野州麻紙工房として麻をアピール機会が増えていくのがとても
いい。他には書道家や画家などのアーティストに「麻」という素材を自分の
作品に取り入れてもらうことは新しいネットワークの拡大につながる。

来年からはまたいろいろとありそうなので、随時ふぁーみんぐ通信という
形でお知らせしていきたい。

ま、とりあえずホームページを久しぶり見てくださいませ。

ヘンプ55の公式ホームページ

 http://www.hemp-revo.net/index.html


以上





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