ふぁーみんぐ通信03年11月号
       ヘンプ・マテリアルシリーズの新発売 〜グリーンコンポジットの巻〜



●まずは材料の話から

人類が生まれてから衣服や道具や住居に様々な材料つかわれている。その材料を簡単
に分類してみると

金属         : 鉄、銅、鋼、鋼合金、軽合金、超合金、、、、
高分子(ポリマー) : 木材、皮革、植物繊維、動物繊維、合成繊維、プラスチック、、、
複合材料      : 土壁、鉄筋コンクリート、合板、合成ゴム、FRP(繊維強化プラスチック)、、、
セラミックス    : 石材、陶器、ガラス、セメント、セラミックス、、、

ヘンプ(麻)は、植物繊維であり、主にセルロースと呼ばれる高分子から成り立っている
ので、高分子(ポリマー)に位置づけられる。その化学成分は、靭皮部(繊維の部分)と
木質部(オガラと呼ばれる芯材)では少々違う。

             靭皮部 木質部  全体
------------------------------------------
1%NaOH抽出物   14.74   12.4   31.32
リグニン         6.0   21.92   17.8
セルロース       73.60  46.58   48.32
ペントサン        6.5    25.4   17.08
灰分            4.3    2.2    2.47 
アルコール・ベンゼン抽出物             5.95 
            (ポーランド天然繊維研究所より)


●ヘンプ・プラスチックの製造って?

植物由来のプラスチックで有名なのが「ポリ乳酸」。土に帰るプラスチック原料(生分解性
ポリマー)の一つである。この作り方は、トウモロコシやジャガイモ等の澱粉(でんぷん)を
分解酵素でデキストロースなどの糖質とし、それをエサに乳酸菌発酵により乳酸をつくり、
これを重合して、ポリ乳酸をつくる。

ヘンプは、セルロースが主体なので、前処理が必要となる。乳酸発酵のところを
アルコール発酵にすれば、エタノールができ、ガソリン代替燃料となる。

セルロース加水分解→多糖類→乳酸醗酵→ポリ乳酸(生分解性プラスチック原料)
                    アルコール発酵→エタノール(バイオ燃料)  

もう一つの方法は、従来からあるダイセル化学工業などが実用化している酢酸セルロース
からつくった生分解性ポリマーがある。現在は、コットンリンターや木材パルプから製造して
いるが、セルロース分が多いヘンプからの製造も可能である。

@前処理              
麻茎&オガラ→チップ化→パルプ化→パルプ(セルロース)
                       →残渣(リグニン)
Aポリマー製造
パルプ→酢酸セルロース(ダイセル化学工業が実用化済み)
残渣→リグノフェノール(三重大学・岐阜生活技術研究所が研究中)             

B成形加工
 セルロース系は、生分解性プラの中で最も成形加工が容易 

いずれにしてもヘンプをポリ乳酸や酢酸セルロースの形にしてしまえば、プラスチックは
できるのである。課題は、ヘンプ茎に含まれるリグニン(木材に多く含まれる)の変換
技術である。三重大学などの研究により、リグノフェノール樹脂となれば、従来のフェ
ノール樹脂のように使えるため、用途が飛躍的に拡大できるであろう。


●複合材料(CM:Composite Material)としてのヘンプとは?

ヘンプ → プラスチック  という変換は多少ハードルが高いが、
ヘンプ+プラスチック → 複合材料  は、すでに実用化されている。

前回の10月号で書いたメルセデスベンツをはじめとした自動車会社が車体の内装材
に使っている技術は、この複合材料という分野である。

プラスチックの強度を上げるためには、ガラス繊維(グラスファイバー)が一般的であ
るが、自動車リサイクル法、拡大生産者責任の観点から、フラックス、ヘンプなどの
天然繊維に代替されつつある。

複合材料には、マトリックス(母材)と強化材(充填材)の組み合わせによって、
様々な機能をもたせる。自動車内装材であるドアトリムの場合は、不飽和ポリエステル
をマトリックスとし、ヘンプ繊維を強化材に使用し、プレス成形の1種であるSMC
(シート・モールディング・コンパウンド法)によってつくられているのだ。

天然繊維一般と他の強化繊維との比較

繊維     密度   比強度(GPa)    弾性率(GPa)   コスト($/t)    エネルギー消費(Gj/t)
----------------------------------------------------------------------
天然繊維  0.6−1.2  1.6-2.95   10-130       200-1000    4
Glass       2.6     1.35             30             1200-1800       30
ケブラー      1.4     2.71             90               7500              25
カーボン    1.8     1.71            130              12500            130
             (Building Materials &Technology Promotion Councilの資料より)

ヘンプを含む天然繊維は、ガラス繊維などよりも密度が軽いため、車を軽くでき、
強度などの機械特性面で同等もしくはそれ以上の特性をもち、コストやエネルギー消費を
格段に抑えることができる。単に法的規制、環境問題対応だけでなく、メーカーにとっても
大きなメリットがあるのである。

 性能が一緒で、軽量化、省エネ、低コストできるならば、今後、自動車メーカーだけでなく、
住宅建材メーカーや樹脂メーカーなどが天然繊維の利用を推進すると予想される。


●グリーン・コンポジットの時代がやってくる

生分解性複合材料、環境調和型複合素材とでも訳されるグリーン・コンポジット。その素材
には、地球上にもっとも多く存在するバイオマス資源=セルロースの活用が必須となる。
セルロースは、毎年約2000億トン程度光合成され、再生産可能な資源であり、その生産
・分解過程は、カーボンニュートラルであり、極めて環境負荷の小さいものである。

残念ながら、この分野での日本の研究はめちゃくちゃ遅れている。日本の研究者なんて全
部あわせても10名ぐらいしかいないのではないだろうか?

複合材料の分野が工学部系であり、どうしても機械特性(引張強度、曲げ強度など)の検証
が必要なために研究者の専門が偏ってしまっている。工学系には、天然繊維の利用という
発想がそもそもないし、植物を扱う農学系には、複合材料???という世界である。

グリーン・コンポジットは、まず既存の石油系樹脂(マトリックス)+天然繊維(強化材)から
はじまり、その後、ポリ乳酸などの植物系樹脂(マトリックス)+天然繊維(強化材)となって
いくものと考えられる。


●ヘンプ・マテリアルシリーズを新発売!

ヘンプの素材はどこからどのようにして手に入れるの??という研究者やメーカーなどの
期待に応えるために、6種類のヘンプ素材の取扱をはじめました。

1)ヘンプファイバー「バージン」
  繊維と茎を分離したときに一番はじめにとれる繊維 用途例:パルプ(紙)など

2)ヘンプファイバー「クリーニング」
  バージンをきれいな繊維だけにしたもの 用途例:自動車内装材、断熱材など

3)ヘンプコットン
  工場からでるパウダー状のくず  用途例:麻スサ、プラスチック副原料など

4)ヘンプコアペレット
  茎の心材(コア)の部分でつくられたペレット状原料  用途例:プラスチック原料

5)ヘンプファイバーペレット
  茎の心材と繊維が混合されているペレット状原料   用途例:プラスチック原料

6)ヘンプチップ
  茎の心材をチップにしたもの  用途例:建築材、動物用敷き藁など


以上






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