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ふぁーみんぐ通信05年11月
鴨川自然王国にてヘンプ建材ワークショップ〜麻壁づくりの巻〜
| 鴨川自然王国の眺め | プレハブ小屋 | リフォーム前の様子 |
●ワークショップをするきっかけ
私が今年のお正月に鴨川自然王国(千葉県鴨川市)に1泊2日で遊び
にいったときに泊まったプレハブ小屋があった。そこは、文字通り工事現場に
あるプレハブで2F立てで、1F部分に木造づくりの増築した形をした小屋であった。
鴨川自然王国は、大地を守る会をつくり、歌手の加藤登紀子さんの旦那さん
である(故)藤本敏夫さんがつくった農業法人である。
鴨川自然王国のスタッフである三尾さん(現在:藤本ミツヲ)からヘンプで何
かできないかという話があった。いろいろ話をした中の一つにプレハブ小屋
を麻の家にしてみたいというテーマがあった。
環境と文化とビジネスを結びつけ、スローライフ提案の先駆けであるNGO、
ナマケモノ倶楽部が建築のワークショップを企画していて、スロー・ビルディン
グを実践体験できる場を探していた。
鴨川自然王国とナマケモノ倶楽部の想いが一致し、今回の素敵な企画に
つながったのである。
| トムクラフトの森本先生の指導 | 断熱材を入れる前 | 先に工事した壁面(右側) |
●ワークショップの趣旨
今回のワークショップは、「自然素材を使ったリフォーム体験!」
建築業界の間では、自然素材=高い建材となっていて、なかなか普及していない
のが現状。しかし、ユーザーであるお客さんは、健康や環境問題に意識が
比較的高く、なるべくよいものを探しているが、なかなかどれを選べばよいかわからない。
このような状況を少しでも解消するために、ホームセンターや地元の材木屋で
材料を調達でき、自然素材(今回はヘンプ)を使った建材で、なるべく安くリフォーム
するにはどうすればよいかを頭ではなく体で理解できるというコンセプトで企画
した。
ヘンプ(麻)を使う理由は、
1)日本古来から使われてきた建築資材の一つであること
白壁や漆喰壁には麻スサ、茅葺屋根材にオガラ、建築用の縄や紐、畳縦糸には麻糸など
2)農薬いらずで栽培でき、森林資源の代替作物だからである。
3ヶ月で3m成長する1年草。森林資源の約4倍の生産量
3)調湿建材であるから
繊維をとった後の心材(オガラ=麻チップ)には、ミクロン単位の穴があり、
湿度を調整できる
今回のワークショップの建築を担当したのは、自然素材内装業であり、
ヘンプ建材を扱っているトムクラフトであった。ここは、3年ほど前に自らの事務所を
麻壁にしてから全国で30件施工をしてきたところである。
ワークショップには参加者が35名(男性15名、女性20名)集まり、とってもにぎや
かな感じでスタートした。
ヘンプや藁の家(ストローベイルハウス)に興味のある人、主に古民家に住んで
みたい人や自然素材を使ったリフォームに興味にある人など参加動機は様々。
ワークショップをスムーズに進めるために、トムクラフトは、天井と床板を張り、
壁4面のうち2面をすでにある程度つくりこんでいた。
| ドア側の壁面 | たくさんの参加者! | ヘンプ断熱材 |
●1日目の作業工程:断熱材貼りと下地処理
用意したもの
ヘンプ断熱材、パン切りナイフ、プラスターボード、ビス、インパクトドライバー、
墨壷、差しがね、スケール、ボードやすり、丸鋸、
カッター、低公害パテ、ローラー、シーラー、ハケ、寒冷紗テーマ、ミキサー、
バケツ、ひしゃく、タッカー、タッカーの芯、養生テープ、ブルーシート、養生シート
1)ヘンプ断熱材を壁の大きさにスケールで測って、パン切りナイフで切る
2)切ったヘンプ断熱材をタッカーで留める
3)プラスターボードを壁の大きさに丸鋸で切る
4)プラスターボードのビスを30センチ間隔で打ち付けるために
墨壷を使って、ビスの止めの目安をつける
5)インパクトドライバーを使って、ビスで留める
| 1)断熱材を切る | 2)タッカーで留める | 3)プラスターボードを切る |
6)プラスターボードのつなぎ目にカッターで溝をつける
7)プラスターボードのつなぎ目に寒冷紗テープを貼る
8)低公害パテを水で練り、つなぎ目やビス頭をハケで塗る=パテ処理
9)窓枠などが汚れないように養生する
10)ドロマイトプラスターを缶に開け、1缶に対して水コップを
2〜3杯入れてひしゃくでかき回す
11)10)をバケツに移してローラーで麻壁を塗る面に全面に塗る。
| 5)ビスを留める | 6)カッターで溝をつける | 7)寒冷紗テープを貼る |
ヘンプ断熱材は、ドイツ製でグラスウール16Kと同じ断熱性能をもつ。
普通、断熱材はガラス繊維でできたグラスウールを使うが、施工時の
チクチク感や肺気腫の恐れからできれば使いたくない素材の一つ。
プラスターボードは、石膏でできており、ホームセンターで安く買える。
パテは通常の5倍高い低公害パテという商品名のものを使用。これがあると
シーラー(下地塗り材)塗りがなくなる。
プラスターボードは、丸鋸でも切るが、定規を当てて、カッターで2回削って
折り、その折目にカッターを入れて、簡単に切ることができる。しかし、この
ときに切れたところをボードやすりを使って表面を平らにする必要がある。
丸鋸ではその必要がない。
女性参加者が多かったためにインパクトドライバー初体験という方もたくさん
いて、ビスを打ち付ける「ダッダッダ!」の音にびっくりしながらも楽しそうに
作業をしていた。
| 8)パテを水で練って、 | パテ処理をする | 9)養生する |
寒冷紗テープを貼って、パテ処理をするのは、左官材を塗った後、ボードのつなぎ目に
亀裂が入らないようにするためである。
●二日目の作業工程:麻壁塗り
麻壁ドロプラタイプ(ドロプラ1缶でつくる分量)
ドロマイトプラスター 1缶 20kg
珪砂5号(白) 15kg
麻チップ 1.4kg
水 適量
この分量で3mm厚にプロが塗って、8平米分。
使用するもの
ミキサー、桶、コテ(鏝)、パレット、ひしゃく、バケツ、ブラシ
| 1)〜3)左官材をつくる | 壁塗りスタート! | 上の方から塗ります |
1)桶にドロマイトプラスターを1缶を移し、水を加えて攪拌する。
2)砂を3〜5回に分けていれ、その都度攪拌する
3)麻チップを3〜5回に分け入れ、水を足しながらその都度攪拌し、
耳たぶほどの硬さにする
4)桶のネタをパレットに乗せ、コテ(鏝)を使い、壁を塗る。
5)塗りすぎたところは少し剥がして、麻壁材をコテでのばし、
下地が見えているところは、見えないように麻壁材をコテでのばす
6)自然乾燥したら完成 (3日ぐらい)
ドロマイトプラスターは、マグネシウムを多く含む白雲石を焼成・消化したもの。
漆喰に似ており、施工性に優れているため、新建材が普及する以前は建築
漆喰に似ており、施工性に優れているため、新建材が普及する以前は建築
資材として広く使われていたものである。白雲石は栃木県葛生地方が生産地。
通常の工務店の内装工事で左官仕上げをするときに、健康住宅の流行で
珪藻土を使っていることが多いが、壁とのくっつきが悪いので化学糊(接着剤)
を必ず使用している。そうするとせっかくの珪藻土の調湿建材としての特徴を
無くし、シックハウスの原因をつくるケースが多いという。
今回、使ったドロマイトプラスターでは無機化合物を添加しているので、
壁と左官材がイオン結合でがっしりとくっつくように工夫されている。そのため、
接着剤なしで施工できるのが大きな特徴なのである。
但し、欠点としてドロマイトプラスターは、珪藻土より調湿性が劣るため、
麻チップを入れて、調湿性能を上げている。これが麻壁仕様。
それから、平均厚さ3mmがプロ仕様なのだが、コテを使って、みんなで左官をする
と私たち素人ではどうしても厚めに塗ってしまう。
それ以前に麻チップが入って、手に力をこめないと壁でネタを伸ばせなーい。
きちんと壁塗りするなら、コテの全面を使わなければならないに、コテ(鏝)の
コテ先で壁塗りしていることが、小手先の意味に由来している。まさに
小手先しか使っていない状態からみなさんスタート。
2時間ぐらい経ったら、なんとなくコツをつかめて、腕が筋肉痛になることを
恐れずにガンガンと塗り、塗り。。。
35名もの参加者がいたので、予定の15時前に壁塗り終了。
| だいぶん出来てきました | ラストスパート?! |
仕上げ |
●参加型の家づくり&リフォームの心構え
1日目夜の大岩剛一先生(成安造形大学教授・一級建築士)の講演会が
あり、その中で印象に残ったのは、自然素材を使った建材で、ワークショップ
形式でセルフビルドをするときの心構えであった。
現在は、家づくり・リフォームのあらゆる作業が専門化、分業化され、全体を
見れなくなっている。お金を払えば、買える物になっている。家をつくりたい、
リフォームをしたいと思う側がしっかりと勉強しないと、シックハウスや手抜き
住宅などとんでもない状況になってしまう。
建築業界では、クレームがつくと設計者のミスなのか、大工のミスなのか、
他の関連業者のミスなのかを突き止め、改善しなければならない。
家を建てたい、リフォームしたいという施工主が、ワークショップ形式で家づくり
をした場合、素人で参加した人のちょっとした失敗を許容できないと難しい。
また、職人と素人の意見交換による設計変更を現場で決めたり、多少ゆがん
でいたり、位置が違っていたりしていても「まあ、いいか」の気持ちいられるか
どうかである。
このような意識をもった方が増えていくことが、多少なりとも手間がかかり、
お金もかかる自然素材の普及につながると思われる。
| 大岩剛一さん | 講演を聞いています! | とりあえず完成! |
●またやりたいなー
2日間とも天候に恵まれて、地元の方もたくさん参加したとても素敵な企画でした。
床面積10坪のプレハブの1階が見違えるような内装になったと思われる。
冬は暖かく、夏は涼しい、断熱材効果のある部屋になった。
麻チップのおかげで湿度を調整するので快適な部屋になった。
冬は暖かく、夏は涼しい、断熱材効果のある部屋になった。
麻チップのおかげで湿度を調整するので快適な部屋になった。
2Fがまだ手付かずなので、機会があったら2Fもワークショップ形式で実施してみたい。
工事期間がワークショップ工程を入れて、8日間。
材料代で約56万円 これに工事手当や諸経費を加えてだいたい100万円で実施。
自然素材を使ったリフォームとしては、かなりの低予算で実行。
参加者35名、スタッフ10名の総勢45名のわいわいがやがやの雰囲気。
歌手・加藤登紀子さん、娘のYaeさんも壁塗りに参加。
参加者同士のいろんな出会いに貢献。
ちなみに食事内容は、
12日昼:地元の天然酵母パンとトマトベースの海鮮スープとヘンプオイルサラダ
12日夜:牡蠣とタラの魚鍋と豚汁鍋と地元の長狭米
13日朝:昨日の鍋の残りにうどんを入れて食べる
13日昼:鴨川自然王国の野菜たっぷりのカレーライス
食事スタッフのおかげで参加者は作業に集中でき、しかもどれも美味しいとの評価であった。
ハチドリセミナー第2回 エコ建築ワークショップin 鴨川 11月12日・13日
主催:ナマケモノ倶楽部
場所:鴨川自然王国
助成:地球環境基金
麻壁づくりワークショップ、またどこかでやりたいです!!
※この様子はアウトドア雑誌「ビーパル1月号」に特集で掲載予定!
以上
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