ふぁーみんぐ通信 06年4月号
世界初のヘンプ・プラスチックの団扇!
●ヘンプ・プラスチックとは?ヘンプという植物からプラスチックをつくる試みは、世界各地で様々な取り組みがなされているが、素材と機能別に分類すると次の4つがある。1)ヘンプ100%として:ヘンプのみ2)生分解性材として:植物系+ヘンプ3)充填材として:石油系+ヘンプ4)強化材として:石油系+ヘンプ繊維一般的にプラスチック材料は、用途によって、透明なものから不透明なもの、軟らかいものから硬いもの、電気を通すものから通さないもの、薬品に強いもの、熱に強いもの、生分解しないものからするもの、などいろんな機能が求められる。様々な分野に使われるそれぞれの機能を満たすためには、ヘンプ1種類の特性だけですべてをカバーするのは、現在の技術では不可能である。そのため、プラスチックの用途にあわせて、様々な組み合わせが考えられ、プラスチック原料に対して様々な添加剤や充填材を使う。ヘンプ・プラスチックとは、ヘンプ100%からできたもののみをヘンプ・プラスチックというのではなく、ヘンプ繊維や繊維を採った後の芯材=オガラや種子から採れるヘンプオイルを原料に使い、様々な機能を満たすために他の樹脂や添加剤や充填材を加えた合成樹脂全般のことと定義してよい。●実用化される(4)の強化材としてのヘンプ繊維上記の1)〜4)の中ですでに実用化されているのが強化材の分野である。その他はまだ研究段階だったり、試作済みでも製品が市販されていなかったりするので、ここでは、詳細には触れない。よく知られている例が、自動車内装材の複合材料分野である。メルセデスベンツ、BMW、アウディをはじめとした海外の自動車会社が車体の内装材に使っている。通常、プラスチックの強度を上げるには、ガラス繊維(グラスファイバー)と混ぜるのが一般的であるが、自動車リサイクル法、拡大生産者責任の観点から、亜麻やヘンプなどの天然繊維に代替されつつある。ドイツの事例では、2003年の自動車生産台数550万台(乗用車及びトラック)で、自動車分野における天然繊維の使用量が8・8万トンあり、1台当たりにすると16キログラムの天然繊維が使用されたこととなる。
BMWドアパネル加工後 加工前
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複合材料には、マトリックス(母材)と強化材(充填材)の組み合わせによって、さまざまな機能をもたせる。自動車内装材であるドアトリムの場合は、不飽和ポリエステルをマトリックスとし、ヘンプ繊維を強化材に使用し、プレス成形の一種であるSMC(シート・モールディング・コンパウンド法)によってつくられている。ヘンプを含む天然繊維は、ガラス繊維などよりも密度が軽いため、車を軽くでき、強度などの機械特性面で同等もしくはそれ以上の特性をもち、コストやエネルギー消費を格段に抑えることができる。単に法的規制、環境問題対応だけでなく、メーカーにとっても大きなメリットがあるのである。
●NFRP(天然繊維強化樹脂)としてのヘンプ繊維ガラス繊維強化樹脂(GFRP=Glass Fiber Reinforced Plastics)と区別するために、天然繊維強化樹脂(NFRP=Natural Fiber Reinforced Plastics )と呼ばれている。この分野で、フランスのある会社が、2004年度から生産をはじめている。日本では、(有)ジャパンエコロジープロダクション(JEP)がこの会社の総代理店になり、天然繊維強化樹脂の販売及びその製造ライセンス供与を仲介業務を2005年度から開始している。
この樹脂は、強化材としてヘンプ繊維30%を混ぜ、熱可塑性汎用樹脂70%を複合させている。通常の金型を用いて射出成形機や押出機で成形が可能なものとなっている。独自の特許技術である天然繊維の表面処理技術により低コストで高い特性を持ち合わせた樹脂なのだ。
主な特徴
1) GFRPに比べて軽い(5〜20%)
2) 低コストである(欧州で流通するGFRP価格と比較して)
3) 環境負荷が少ない
・植物由来30%である
・リサイクル性が高い
・製造エネルギーが低い
4) 低収縮性
5) 音響絶縁性が高い
6) 金型の磨耗が少ない
グラフの緑色が各天然繊維によって強化された値、ヘンプ繊維が最も強化されている。
オレンジ色は、元々の樹脂(ポリプロピレンのコポリマータイプ)の数値である。
この樹脂は、欧州では食用パレットに使われている。欧州では木製のパレットは防腐剤による食品汚染の関係で、使用禁止されており、この樹脂のパレットが軽くて丈夫という点で採用されている。現在は年間6000トンの製造能力があり、2006年末にも十倍の6万トンの供給体制が整う予定である。
食用パレット
●ヘンプ・プラスチックの環境負荷は?
天然繊維の中でもヘンプ(Hemp)は、成長性が早く、農薬や化学肥料がほとんどいらず、 冷帯、温帯、熱帯と幅広い気候条件で栽培でき、品質の高い繊維が採れるのが特徴である。
今回は、具体的な製品ではなく、それぞれの原料における製造と焼却の2つのプロセス
における環境負荷を求めてみた。また、環境負荷の代表的な指標であり、地球温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)の排出量のみを対象とした。
比較する原料は、次の3つである。
@石油由来の合成樹脂(例:ポリプロピレン)
A一般的に強化樹脂として使われているガラス繊維強化樹脂(ガラス繊維20%)
Bヘンプ繊維強化樹脂(ヘンプ繊維30%)
<材料1kg当りのCO2排出量>
ポリプロピレン(PP) 製造 2.0 焼却 3.2 *注2
ガラス繊維(GF) 製造 2.8 焼却 評価不可 *注3
ヘンプ繊維(HF) 製造 −1.4*注1 焼却 0 *注4
@ポリプロピレン100%樹脂
PP(2.0+3.2)×1=5.2kg/kg
Aガラス繊維強化樹脂(ガラス繊維20%)
PP(2.0+3.2)×0.8+GF(2.8)×0.2=4.72kg/kg
Bヘンプ繊維強化樹脂(ヘンプ繊維30%)
PP(2.0+3.2)×0.7+HF(−1.4+0)×0.3= 3.22kg/kg
<CO2排出削減量>
ポリプロピレン100% VS ヘンプ繊維強化樹脂
5.2−3.22=1.98kg/kg → 約38%削減
ガラス繊維強化樹脂 VS ヘンプ繊維強化樹脂
4.72−3.22=1.5kg/kg → 約31%削減
ヘンプ繊維30%入っているから、30%分の石油原料を減らせるという理屈の簡単な裏づけとなった。環境負荷は、CO2だけではなく、エネルギー削減量や大気汚染物質(NOx、SOx)など様々な指標があるが、今回は、代表的なCO2換算で評価してみた。
また、原料製造と廃棄のみのわかりやすい評価としたが、テレビのボディ材などの具体的な製品で材料を変えて比較すると原料採掘ー輸送ー製造ー輸送ー使用ー輸送ー廃棄というLCA(ライフサイクルアセスメント)が可能となる。
●ヘンプ・プラスチック、、、いろいろ作りたい!!現在、ヘンプ繊維強化樹脂の種類は、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ABS(アクリロニトル・ブタジエン・スチレン)、PVC(塩化ビニル)の4種類ある。この4種類でどんなヘンプ・プラスチック製品がつくれるのだろうか?以前、ブレーンストーミング(アイデア出し方法の一種)をやってみると、、、お箸、傘の柄、名刺入れ、手鏡、歯ブラシ、靴べら、メガネケース、印鑑ケース、茶碗、ブラインド(窓)、ガーデニング資材、フォーク、ナイフ、カップ、まな板、サーフボード、お盆、石けんケース、うちわ、会員証カード、パソコンのマウス、マウスパット、ルアー、釣り竿、ボールペン、携帯電話、なんでも気に入ったのがあれば、通常、何かプラスチック製品をつくりたい!と思い立ったら、次のようなプロセスになる。1)作りたい製品を決める
2)樹脂の種類、製品の数量を決める
3)金型を探す&金型をつくる
4)試作する
5)製造の見積書を確認する
6)製品化たいていネックなのが、3)の金型探し&金型づくりである。これらの課題をひとつずつクリアしていって製品化にこぎつける。早くても3ヶ月、通常6ヶ月ぐらいは製品開発期間として見ておいた方がよいだろう。●世界初のヘンプ・プラスチックでつくった団扇の骨材!
ヘンプ(麻)といえば「夏」。夏といえば暑い、暑い夏を乗り切るには団扇が必要だ。こんな単純な発想から、ヘンプで団扇をつくった。元々は、那須高原にあるマリファナミュージアムの「大麻博物館」が麻畑のきれいな写真の団扇を商品化しているのを見て、団扇の柄(骨材)もヘンプだったらなー、と思ったのがそもそものはじまり。写真で見ての通り、キャラメル色の自然な風合いと質感がなんともいえないいい味を出している。表面には、「日本の伝統を支える麻、未来をつくる万能植物ヘンプ」という文字と前面に麻畑を上から見た麻の葉模様のような麻の葉っぱのカラー写真。裏面には、ヘンプ(麻)からできる様々エコ製品というタイトルで、麻の茎、種子、葉、根、花穂からできる製品例を写真と解説付きで書いた図を掲載。
このバージョンは、小売:300円で販売し、お店の方には20枚から卸販売もしている。お店や会社でノベルティ商品や販促広報に役立てるためにオリジナルのヘンプ団扇をつくりたい場合も最小ロット500枚から受け付けている。今年の夏は、ヘンプの団扇で、縁起のよい風を起こし、ヘンプの復活のムーブメントの風も一緒に起こしましょう!製品化されたヘンプ団扇が欲しい方オリジナルのヘンプ団扇を作りたい方もこちらで受付ています。
注1:ヘンプ繊維の製造(農場)におけるCO2排出量
ヘンプの農業栽培における環境負荷は、
CO2換算量 2330kg/ha ( 茎収量6720kg乾燥重量)
出典:Hayo M.G. van der Werf "Euphytica" 140: 13?23, 2004.
Life Cycle Analysis of field production of fibre hemp, the effect
of production practices on environmental impacts
ヘンプの収穫物の炭素固定量は、乾燥重量の約50%なので、3360kg/ha
よって、CO2換算量は、12331.2kg/ha(炭素換算 二酸化炭素(CO2)の量を炭素(C)相当分で算出する方法。
炭素換算値はCO2の量に0.273を掛けて得られる。
逆に炭素換算の値に3.67を掛けるとCO2の量が得られる。)
農業栽培のCO2排出量−収穫物の炭素固定量をCO2換算量したもの
=ヘンプの1ヘクタール当りのCO2排出量
2330kg−12331.2kg
=−10001.2kg/ha
ヘンプの茎1kgに換算するとCO2換算量−1.488kg
(少数3位を切り捨てて、−1.4kg/kgとなる)
*注2 「誰でも使えるFRP」社団法人強化プラスチック協会の資料より
*注3 ガラス繊維は、焼却できないので評価不可となっている。
*注4 一般廃棄物・産業廃棄物での焼却分のうち、食物くず(生ごみ)や紙くず等の
バイオマス起源の廃棄物の焼却に伴う二酸化炭素の排出は、植物により大気中から吸収され除去された二酸化炭素が再び大気中に排出されるものであるため、1996年改訂IPCCガイドラインに基づき排出量には含めないこととされており、 排出係数がない(排出係数0扱い)となる。
以上
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