ふぁーみんぐ通信08年1月号
        復活したもの&復活させたいもの  〜伝統みらい素材「麻」の巻〜


●いろいろ復活させたいものがある!

 大麻草は、縄文時代から日本人にとって生活必需品を支える重要な素材であった。現在では石油由来製品が普通となってしまったために、大麻草由来製品がいつ、どこで、使われているか全くわからなくなってしまった。

ここでは、現在、@流通している伝統的商品とA2000年以降復活した商品とB今取り組もうとているもの、それから、C今後、何らかの基金もしくは、復活コーディネーターがいればできるものを羅列した。

麻で何かしたい!何かに参加したい!というお問い合わせをよく受けるが、下記の復活したい商品プロジェクトに参加するのが一つの方法である。


●知らないところで実は流通している伝統的商品

 <繊維利用>
 精麻(神社用): 神事には欠かせない素材です。
 注連縄、鈴縄 : 化学繊維の神社も多いが、まだまだ流通しています。
 下駄の鼻緒  : 日光下駄ブランドには必ず国産大麻繊維が使用。
 弓弦     : 弓道具屋で売っています。
 締太鼓の紐  : 縄屋・綱屋で極わずかに扱っています。
 結納品    : 共白髪という品に精麻使用。結婚しないとお目にかかれなない?

 化粧回し   : 横綱だけが身につけられる特別な「まわし」

 <芯材・オガラ利用>
 オガラ : 御先祖様の送り火・迎え火のお盆行事に必須アイテムです。
 松明(たいまつ): オガラを松明した伝統行事も多数あります。
 茅葺き屋根材(オガラ): 軒から見えるところに今でも使われています!
 
 <麻の実>
 鳥の餌   : ペットショップ、ホームセンターで売られています。
 七味唐辛子 : 一番身近に見られる商品ですね。


●2000年以降、様々な方がヘンプ麻の有用性と多様性に注目して復活&商品化されたもの

1)野州麻100%の和紙、ランプシェード、壁紙、半紙に!(2001年10月復活)
  
栃木県の野州麻紙工房では、平安時代にほぼ廃れてしまった100%大麻和紙を見事に復活。強靭な大麻繊維をパルプ化するために最もよい方法を全国各地の紙漉職人にあたるがすべて拒否され、ようやく行き着いたある職人と一緒にその技法を確立した。麻農家でもあり、和紙職人の大森芳紀氏の取り組みは、様々な業界で注目されている。
野州麻紙工房 
http://www.hemp-revo.net/yasyuasa/yasyuasa-index.htm


2)麻蚊帳 戦後初めての復活!(2004年4月復活)

  サッカーのジュビロ磐田のある町の蚊帳の(有)菊屋が昔ながらの大麻糸を使った麻蚊帳を復活。なんともいえない落ち着きのある空間が再現した。シングルサイズで5万7千円、ダブルサイズで8万3千円とよい値段であるが、買うだけの価値は十分にある。最近は「蚊帳博物館」もオープンし、化学物質過敏症やシックハウス症候群が問題視される中、蚊帳の効用が改めて見直されている。
有)菊屋 http://www.anmin.com/kaya/ 


3)麻炭 花火業界にしか使っていないものを一般商品化(2005年1月復活)

 麻の繊維を採った後の茎(オガラ)を炭化させたものは、従来より花火の助燃材や携帯用暖房器具のカイロ灰に使われていた。これをインテリア商品及び住宅などの埋炭として販売しはじめたのが岐阜県産業用麻協会。今では、石鹸やパンなどに麻炭が使われたり、書道用の墨にも使われ、今後の商品展開に期待がかかる。
岐阜県産業用麻協会    
http://www.gifu-hemp.net/


4)ヘンプ潤滑油 自転車から釣りのリールオイルまで(2006年2月復活)

  麻の種子から採れる油は、食用、化粧用以外にも工業用にも使える。ヘンプオイルの不飽和脂肪酸の豊富さが塗膜を張りやすい性質をもち、機械油として使われてきた歴史がある。これをマウンテンバイク部品製造会社のファミリープロダクトがヘンプオイルほぼ100%の潤滑油を開発。自然にやさしいアウトドア分野の商品として釣り用途にも広がっている。
http://fishing.tipp.co.jp/product_info.php/products_id/473


5)書道の青墨(2006年4月復活)

墨には、主に油煙墨と松煙墨の2種があり、油煙墨には、桐油、菜種油、麻子油(ヘンプオイル)などを焼いてできた煤(スス)から製造される。昔のように油の煤を取るのはとっても高価になるので、オガラを炭化させたものを膠(にかわ)で固めたものを墨とした。墨には茶系と青系があるが、麻墨は、天然の青色系統の黒色となる。書道する方、日本画の方に限らず、日本文化を愛する人にはおススメの一品である。
岐阜県産業用麻協会
http://www.gifu-hemp.net/


6)日本古来の麻スサ+土壁が復活(2006年6月復活)

  文化財修復を手がける業者によって、当時もっとも強固な壁を使うために用いた紙スサや浜スサを復活。昔は大麻糸で作られた魚網の古くなったものを建築材料に加工してスサにして使ったが、復活した麻スサは麻原料から直接製造。和食しゃぶしゃぶチェーン店のかごの屋千石店(東京都文京区)のVIPルームの土壁(右写真)に採用され、とても評判がよいとのことである。
ジャパンエコロジープロダクション http://www.jep-japan.com



●2008年1月現在、復活させようと取り組んでいるもの

7)柔道畳 (畳縫糸と経糸は2008年1月に復元)

柔道の激しい動きに耐えられるように開発された畳が柔道畳である。大分のカヤツリグサ科の琉球イグサ、相模原の稲ワラ、長野の鬼無里の畳糸など様々なグループのつながりにより、柔道創設者の嘉納治五郎が使っていた柔道畳をすべて国産材料で復元しようとしている。健康畳植田の植田氏らの畳職人グループが取り組んでおり、北京オリンピックに向けて、畳を製作中。
 講道館の資料によると通常の柔道畳の畳糸は、イチビ(アオイ科1年草:桐麻ともいう)であるが、講道館のものは特別仕様で、経糸に長野県美麻村の大麻繊維がよいとされていた。 



8)麻畳

昔から畳表には、横糸にイグサ、縦糸には日本麻が使われてきた。この日本麻こそがヘンプのことである。有)健康畳植田が2005年畳床にヘンプのオガラを使い、畳の縁にヘンプ布を使ったオーガニック麻畳を商品化した。さらにこだわって、かつての畳麻糸の産地である長野市鬼無里地域と連携して、畳糸(縫い糸と経糸)の復元を実施した。今後、1畳3万円程度の普及バージョンの麻畳を近々市販する予定である。
健康畳植田 http://www.kenkoutatami-ueda.co.jp/p4.htm


●今後、復活させたいものリスト
 (これ以外にもたくさんあると思いますが)


9)凧糸

各地の凧揚げ合戦で使われている凧糸は、今でも大麻繊維が多い。浜松まつり会館に、凧糸製造装置があるが、後継者がいない状況になっている。凧糸は直径5mmで精麻を裂いたものを連続してつないだものを2本合わせた糸である。今年の6月から地元の若者が浜松市と協力して技術復元を行うことが決まっている。浜松市周辺の方で自分も技術を得たいという方がいれば一緒にやりましょう!

10)精麻を使った書道用の毛筆

大麻和紙、麻炭を使った固形墨が復活しているので、最後の筆を復活させようという試みである。これによって、麻の和紙に麻墨で麻の筆によって文字を書くということが実現できる。



11)国産手績みの大麻糸

同じ麻系の作物である苧麻(ちょま、ラミー)の国産、中国産の手績みの糸が販売され、 麻織物愛好家の間で利用されている。国産の織物を求める声が大きいが、肝心の原料と なる糸がないのが大きなネックである。アクセサリーや衣服用の紡績用の糸を経糸に使 い、国産手績みの大麻糸を緯糸に使うことで、様々な織物用品をつくることができる。


12)木曽の麻衣

 長野県開田村にあった県文化財で後継者のいない麻織物である。麻織物に関しては、いくつかの地域で大麻繊維ではない形で残っているが、いずれはどの地域も大麻製でなんとか復活させてみたい。自分の住む地域の麻織物をなんとかしてみたいという方がいれば、随時募集している。


13)カツオの一本釣り用の糸

  かつての船の船具(綱、帆)や魚網、釣り糸は、耐塩性、耐水性に強い大麻製であった。特にカツオの一本釣りの糸は、真竹の竿に大麻糸であった。弓道の弓弦の大麻製はあるが、釣り糸はない。環境にやさしく生分解性があり、天然繊維の中でももっとも強度が高い釣り糸として復活が望まれている。

14)魚網 

1950年まで遡ると大麻繊維の利用割合は、下駄の鼻緒(52%)、畳経糸(32%)、魚網(12%)と第3位のシェアを誇っていた漁網。大麻繊維の魚網は漁をする度に柿渋が塗られ、耐久性を高めて使われ、解れた箇所は自分で繕っていたという。

麻織物の糸 < 蚊帳糸 < 魚網 < 釣り糸=畳糸 < 凧糸 < 注連縄 < 鈴縄 

この順で太くなっていくのです。 
魚網って微妙な太さで、どうやって復元するかまだ目処がたっていません。


15)漆喰「麻壁」の家

お城の城壁や町屋の白壁などの漆喰壁は、昔から石灰、フノリ(海藻の糊)、麻スサ(麻の繊維くず)を原料とする。それらを練り合わせて、何回も塗ることで日本の気候 風土に耐えられる壁になっている。現在では、麻スサではなく、麻チップ(オガラ)を 主原料とした麻壁が提案されている。海外では、オガラ専用の石灰も開発されており、 それを使った実験棟をつくって建築環境データを取得し、麻壁が調湿機能にすぐれたも のであるかどうかを証明することが望まれている。


16)カイロ (携帯用暖房器具)

  オガラの炭でつくられていた懐炉は、ベンジン・白金懐炉、鉄粉懐炉(現在の懐炉)の2世代前の明治時代に開発された商品である。現在でも天体望遠鏡のオプション品にカイロ灰があり、夜露によるレンズの曇りを防ぐために使われているが、麻炭製のものではない。懐炉だけでなく、夜空の星を見るためにも使われていたレトロ感たっぷりの商品として復活が望まれている。


17)灯明油

鯨油、菜種油、エゴマ油とともに使われていたのが麻子油。「大宝令」(701年)や「延喜式」(751年)によると灯明の芯も麻糸であったという。ヘンプカーのときに少し実験したけど、商品化までは至っていなかったような気がします。もう一度復活、復元しませんか?

18)焼き物の釉薬

オガラの灰は、珪酸というガラス質が多いので、陶器の釉薬に使うと光沢のある仕上がりになる。これを復活するプロジェクトが動いている。陶芸家の人はぜひご参加を。


19)国産麻の実

長野のおばあちゃんが「ゴマ和えより美味しかった!」という麻の実の和えもの。この味を再現するには、国産の麻の実が必要である。栽培面積を増やして、商品流通して日本のよき伝統と文化を守っていきましょう。


●麻畑サポーターになろう! 復活プロジェクトの基金と人を募集します!

もう今年で6年目を迎える日本の麻畑サポーターの会は日本の麻畑を維持管理するだけの基金に加えて、今年からは復活商品のためにも利用していきたいと思う。一番、コストがかかるのが原材料費。そもそも少ない国産大麻原料からこれらのものを作るので高コストになる。しかも加工方法は、試行錯誤の連続である。

ちなみに信州麻プロジェクト協議会で実施した40年ぶりの畳糸復元には、2007年度だけでも160万円も掛かかった。これでも多くの方に無償ボランティアで協力してもらっているのが現状だ。

大麻草に関しては、趣味や道楽の世界ではない。縄文時代からから続いた日本の消え行く伝統技術・生活技術を守れるかどうかである。

伝統を守るには、かつてのものを単純に復元するだけでなく、経済活動へとつなげていくことが基本である。これには、なんらかの仕掛けが必要である。復活プロジェクトの全てが「コストが合わなくて廃れたものを、どうやるのだ?!」という世界である。

これは頭ではよーく、わかっていることだけど、これを実行していくには少々エネルギーが必要。いろんな方の知恵とお金と労力で、なんとかしていきたい。

なんとかしたい方は、ぜひお問い合わせを!
麻畑サポーターになりたい方もぜひお問い合わせを!
akahoshi@hemp-revo.net

麻畑サポーターはこちら
http://www.hemp-revo.net/hempsupport/home.htm






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