ふぁーみんぐ通信08年8月号
                 「買う豊かさ」から「つくる豊かさ」へ
       〜7月31日〜11月11日までOZONE「麻のある上質な暮らし」展スタートの巻〜




 案内看板

●10年目にようやく業界のスタートラインに!


98年11月15日にテレビ朝日で放映された宇宙船地球号「大麻は森林を救う」
の中で、カノスモーズというヘンプ建材の事例があった。この映像の衝撃と
反響は大きく、ヘンプ建材をいつか日本で普及できたらいいなーという今日までの
大きな動機となっている。

それから、いくつかの企業がヘンプ建材及びインテリアで新商品として
開発と商品化を行ったが、住宅・建築業界への影響はそれほど大きな
ものではなかった。毎年、リフォームフェアやアースデイなどの展示会
を通じて、ヘンプ建材という分野へのプロモーションを行ってきたが、そこで
大きな広告宣伝費をかけることはできず、ご紹介レベルにとどまっていた。

それで今年の初めに、新宿のリビングセンターOZONE室内環境ラボという
エコ建築や環境住宅の分野で情報発信の中心的なところが麻というテーマ
で展示会をするのはどうだろうかと話の打診があった。早速、打ち合わせ
て、様々なヘンプ建材があることを紹介すると、「それだけ(商品数)が
あるならやりましょう」ということで企画スタート。

ところが、業界標準のMSDS(材料安全データシート)を揃えておらず、
今回の展示会に向けて、OZONEに商品登録をするところから始めた。
ヘンプ建材は、余計な化学物質を使わないものがほとんどなので、書類を
作成するのは各社慣れない作業で苦戦したが、OZONE基準から逸脱した
ものはほとんどなかった。

 ハレハレ麻和紙を使った壁

●商品コンセプトと各社の思い入れとOZONE

麻で楽しむ上質な暮らしというテーマなので、ヘンプ以外のリネンや
ラミーなどの天然素材、広い意味での麻の見直しを入口にした。
ヘンプだけの建材より、OZONEがこれまで扱ってきた麻系の建材やインテ
リアも巻き込んで実施したいという意向であった。

ここまではよくある話。「ヘンプ、大麻草、HEMP」と1つの植物に焦点を
当てはめない手法は、展示会や企画展ではお馴染みである。

しかし、ヘンプは、他の麻と同列でよいのだろうか?素材のもつ意味や
世界観や社会的背景を考えると(知識として少し知っていると)、同列に
語れないのだ。同列に扱って欲しくないヘンプ建材のいくつかの業者が、
主催者であるOZONEのやり方に疑問を投げかけた。

ヘンプは、単なるエコロジー、和の暮らし、ロハス(すでに死語?)、
オーガニック志向と同じではない意味合いをもつ。同じではない意味合い
やコンセプトを持つ
から、商品化に意義を感じている方も多いはずだ。

このことが準備段階では、どうしても主催者側に伝わらなかったように
思える。
(一般的にも伝わっていないから、ヘンプ商品の普及がいまいちな面もある)


 健康畳植田の麻畳


●どうやったらヘンプの世界観が伝わるのか?

これに関しては、展示企画をコーディネートしている私の責任でもある。
もう少し違う切り口で語らないと、
「なぜ、ヘンプだけにそんなに特別視する必要があるのか?」
という素朴な疑問がいつまでも解消できないと感じた。

ちょうど、「スローな社会」を提唱し、個人的関係からお世話になっている
辻信一さん(文化人類学者・明治学院大学教授)のGNH(国民総幸福量)に
関する本が大きなヒントとなった。

私が講演でいつも話す「産業構造のパラダイム転換」。
・グローバリゼーション(市場経済主義)からバイオリージョナル(生命地域主義)へ
・地下資源(石油、石炭、ウラン)から地上資源(バイオマス)へ

この2つの切り口は、多くの人にとって頭ではわかるが、お腹や心では
正直ピンとこないフレーズであった。
私たちの住む世界をどのような手段を使って変えるのか?という問い
には、答えているが、その手段を使う人々の心のあり方までは突っ込んで
お話していなかったことがわかった。

スピードが命!!とする経済社会において、スローダウンを提唱していても、
スピードをたまに落してゆっくりしよう!(=スピード社会を前提としている)
というように、世の中に勝手に解釈されてしまっている。

スローな社会で目指した「すべてをスローにする」試みは見事に失敗に
終わり、ときどきゆっくりがいいね〜となってしまったのはさぞ悔しかっ
たであろう(推測)。

そこで、ブータン王国由来のGNP(国民総生産量)からGNH(国民総幸福量)
の発想
が必要となった。先進国も新興国も途上国も、皆が求めている
「豊かさ」の方向が間違っていると。

現時点の我々の社会は、膨大なお金とエネルギーを使って「買う豊かさ」を追及
しているにすぎないと。そうではなく、「つくる豊かさ」に意義を感じ
る社会にしませんか?という提案である。

誰でも芸術家、誰でも農家、誰でも職人の時代である。
買う側からつくる側へと参加しようという提案である。

ヘンプ=といえば、最もよく知られているのがヘンプ・アクセサリーという言葉で
ある。ヘンプアクセの特徴は、誰でも手作りでできることである。多くの若者が
つくる豊かさをヘンプを通じて、無意識的に体験している状況である。

 菊屋の麻の蚊帳と布団


●「つくる豊かさ」を目指して

「買う豊かさ」から「つくる豊かさ」を感じられる、または橋渡しする商品や
サービスがヘンプに求められている。
残念ながらお金だけの基準で見てしまうと、

つくる豊かさ=時間がかかる=人件費がかかる=高い商品とサービス である。

買う豊かさ=いっぱい買わせるために大量生産=安い商品とサービス である。


買う豊かさの商品は、地球環境修復代、戦争被害代、疾病治療代、高い税金、
が全く考慮されていない。むしろ、これらの代金がかかった方がGNP(国民総生産量)
が増えて、景気が良くなると理論上考えらえているし、実際にそうなって
しまっているだ。

現状を嘆いてばかりはいられないので、そのような価値観を打開するために、
一つ一つのヘンプの建材にいろんな方の想いや考えが込められている。
このような価値観を少し知った上で、OZONEの企画展をぜひ見に来てほしい。

 麻スサ2種の展示

●麻で楽しむ上質な暮らし <ヘンプ建材企画展> 7月31日〜11月11日まで


日本初の麻建材の3か月半の長期の展示企画。
リフォームフェアやアースデイなどで出店しているヘンプ建材&インテリア用品の会社
の商品がすべて勢ぞろい。これをきっかけに麻建材のよさを一般の方や専門業者
に知ってもらたいです。

会期 2008年7月31日(木)〜11月11日(火)
※水曜日(祝日を除く)、夏期:8月11日(月)〜15日(金)休館
時間 10:30〜19:00
会場 リビングデザインセンターOZONE(6F 室内環境ラボ)
   〒163-1062 東京都新宿区西新宿3-7-1新宿パークタワー
主催 リビングデザインセンターOZONE
     http://www.ozone.co.jp/index.html
入場料 無料
問い合わせ先 03-5322-6500(10:30〜19:00 水曜日休館)

@大麻断熱材(エルデ)断熱材 ずっと前に登録済み
Aヘンプ麻布団とシーツ一式(ジンノ)寝具
B古代ヘンプ蚊帳(菊屋)寝具 2タイプ(吊り下げ型とワンタッチ型)
C麻畳(健康畳植田)インテリア
D麻和紙ハレハレ、麻和紙障子紙(ハレハレ本舗)壁紙 手漉きバージョン
E京土と日本麻の壁(JEP) 左官材 土壁タイプ
F麻炭(岐阜県産業用麻協会) 調湿材
G麻壁・左官タイプ(トムクラフト) 左官材 漆喰タイプ
H麻壁・版築タイプ(トムクラフト) 左官材 壁材
Iヘンプ麻壁紙(トムクラフト)壁紙 機械和紙漉き
Jなおの麻(住工房なお)塗料

※商品名(会社名)登録分類

●参考文献
辻信一ほか「GNHもうひとつの<豊かさ>へ、10人の提案」大月書店、2008年7月

 企画展が終わった後も常設される麻壁

 

以上





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