ふぁーみんぐ通信09年2月号
         産業用大麻栽培特区の挑戦 〜北海道北見市の巻〜


2008年8月8日に特区認定

国の構造改革特区の制度に、産業用大麻栽培特区の申請を3度挑戦したが、
厚生労働省の分厚い壁は、なかなか突破できず、「ダメ・ゼッタイ、ダメー」
という現行の薬物政策の延長でしかなかった。

EUやカナダ、最近解禁したニュージーランドやフィンランドでは、
産業用大麻(THC成分が低い品種の大麻草)とマリファナになる大麻
(THC成分が高い品種の大麻草)の区別をして、管理する制度設計をして
いるのに、日本はそれができていないのが現状である。

大阪府の橋下知事らの改革派知事が、霞が関解体!!!を声高に叫んでいるが、
日本の諸悪の根源が、霞が関の体制にあるのは、産業用大麻の事例を
新しく持ち出すまでもなく、様々な分野で、規制緩和と制度改革の声が
たくさんある。

国の方針は待てずにできるところからやる!これが一番大切なことである。
人間、一気にいろんなことはできない、自分のできることからする。けれども、
実際は、自分のできるところ〜という狭い視野で捉えていると「掛声倒れ」
「心で思って、行動は一切しない」になることが多い。

しかし、北海道の北見の方々はあきらめずに、国の構造改革の北海道版の
チャレンジパートナー特区
に申請し、それが認定されたのだ。

国でできなければ、まずは地方で。地方分権の時代である。
実際にはカネ、ヒト、モノのすべてが中央集権であるが、
その中で、唯一地方にもできることがある。
それはひたすら、前例と実例をつくることだ。

 書類上、8月8日です!。報道はその前後でありましたが。


●特区の中身とは?

特区の中身は、産業用大麻を栽培するための環境を整えること、条件を
どのようにすれば整えることができるかを検討する特設チームをつくること
である。

特区というと、栽培が自由化されたイメージがあるが、例えば、将来的に
1000ヘクタール、1万ヘクタールと栽培する場合、農家の種子入手方法、
THC検査など様々な現実的問題点をどうクリアしていくかを検討することである。

諸外国では、すでに制度化されたり、法律化されたりして、とっくの昔に
終わっていることが、日本では、「特区」で、ようやく議論するところなのだ。

(洒落をいいました!)

なんせ、今までは、議論しようにも、議論する相手(特に行政)がいないので、
議論にならない=独り言である。独り言ではない、語り(議論)ができるように
なったことにまず拍手である。

えー、そんな程度!!と言わないでください。
ここまで来るのに既に7年かかっているんです!!。関係者の裏方の努力は涙ものです。

もし、私ならもっとうまいやり方で実施できる方がいれば、それは
それで応援しますので、ぜひ名乗り出てくださいね。私どもと一緒に自分の
都道府県で産業用大麻推進政策の採用に向けて実施努力していきましょう!!

 ホテル黒部にて

●2月24日に新産業創出シンポジウム

2009年2月24日に、北見市のホテル黒部で、この農業と工業の連携を
産業用大麻でその可能性を探るシンポジウムが行われた。主催は、もちろん
産業クラスター研究会オホーツクである。この組織は7年前から産業用大麻の
可能性について、ドイツ(2003年)やフランス(2006年)や日本の長野や栃木に
視察ツアーして、勉強会を積んできたグループである。

グループには、地元の建設業の方を中心に、北見市、北見工業大学、北見工業技術
センターなどが加わり、今はやりの産官学連携、農工商連携のグループである。
イベントの後援に、経済産業省、農協、NHK、北海道新聞(道内で一番読まれている)
の地元の支庁・支店をすべてつけての実施である。これだけ見ても気合いが入っており、
今まで、ここまでの後援をとりつけた大麻のイベントは、日本の歴史上初めてである。

 壇上とタイトル

しかし、主催者には悩みがあった。特区認定を受けてから、ちょうど昨年の8月を境
に、大麻事件がマスコミのワイドショーネタとなり、あらゆる人が大麻=悪の図式に
なっている中で、こんな産業用大麻のイベントに来る人はいるのだろうか??
 クラスター研究会のメンバーのほとんどが、絶対に、今の大麻事件の報道の多さは、
我々の特区認定を実質的につぶすことが目的になっていると感じていた。
 24日の直前4日前の参加申し込みは、無料にも関わらずたったの25名。ホテルの
会場は、140名分の机と座席での配置で事前にレイアウト依頼していたのである。

テレビや書籍で超有名になりつつある武田邦彦先生を基調講演にもってきても
この程度か????

当日に奇跡は起こった。

追加の椅子を30以上出しての対応となった。主催者によると200名以上の参加
があり、大盛況で開催できたのだ。


●シンポジウムで話されたこと(ダイジェスト)


 武田先生です。

「日本人が大人になる時」
 武田邦彦(中部大学教授)

→ このテーマは、一見、産業用大麻と無縁な話かと思いきや、日本人が大人に
  ならないと、大麻を語れないことが一番のネックという話であった。

  「大麻は麻薬ではない」ということと、
  「日本の大人は子供だ」
  「日本は独立していない」
  「日本は民主主義でない」
  という文章はほとんど同じ意味を持っている。これについて日本の今の常識では
  考えられない内容について、わかりやすく、地球温暖化やダイオキシンやリサイク
  ルの問題、マスコミの問題も絡めての話であった。



「麻プロジェクト」活動報告
舟山秀太郎、五十嵐龍(産業クラスター研究会オホーツク・麻プロジェクト)

  これまで7年間の歩みとこれからの課題を紹介
  ドイツ、フランス、栃木のそれぞれの視察ツアーの様子が映像で
  紹介されており、非常にわかりやすかった。

→ あらためてダイジェストで見ると、光陰矢の如し・・・・。 


「世界各地で進む産業用大麻の開発」
 赤星栄志(バイオマス産業社会ネットワーク理事)

  ドイツ:自動車内装材、住宅用断熱材
  イギリス:車ボディの研究、住宅、公共建築
  スウェーデン:エネルギー作物
  カナダ:食品と化粧品の市場拡大
  アメリカ:オバマでチェインジ?
  中国:いよいよ動き出す新しい紡績工業
  韓国:研究開発費に多額の予算がつく
  北朝鮮:南北統一の象徴の経済事業
  日本:米と麻のプラスチック、信州麻展

→ これまであまり話したことなかった各国の取り組み事情総まとめという
  感じで話ました。


「離島ヘンプ革命、宮古島・沖縄でのヘンプ利活用について」
 伊香賀正直(バイオマスエコタウン宮古島産業用ヘンプ促進プロジェクト)

  北海道北見市と気温差30℃以上(北見市は−15℃、宮古島は+20℃)、
  距離にして3000kmというところの地での活動の取り組みを紹介。

  宮古島は、サトウキビの裏作、輪作に麻を栽培し、問題となっている
  硝酸性窒素濃度を低減したい、宮古上布との連携などを考えている。
  
  栽培免許の取得はまだだが、豚、牛、鶏の敷藁、農業マルチなどに麻チップ
  をつかって実証実験中。どの動物も気持ち良く寝ている、動物が健康になり
  肉が高く売れるという報告であった。
 
→ いかにも南から来ましたという感じの紹介が印象的でした。
  個人的には、沖縄本島で大活躍している16歳の少女「ジャンヌ・ユキ」
  が大人たちに語る講演会をしていることが紹介されていたのがよかった。


「岐阜県の伝統文化と麻 これからの麻産業に向けて」
 田口龍治(岐阜県産業用麻協会事務局長)

  映像を3つ放映。
  岐阜県の文化財の火祭りの様子 オガラを松明(たいまつ)に使っている。
  美濃の麻和紙の手漉き紙すきの様子 和紙の原料に大麻繊維100%を使っている。 
  長良川で行われている鵜飼の様子 鵜飼の紐や鵜匠の衣装に大麻が使われている。
  
  北海道北見市の先進的な取り組みを参考にして、岐阜県でも活動していきたい。

→ 産業用大麻がメインだったので、文化紹介は短く終了(打ち合わせ通り)。
  

「オホーツクの自然と文化 アイヌの伝統素材と麻」
 井戸理恵子(多摩美術大学非常勤講師)

  アイヌの自然観、日本人の自然観について紹介。
→ 講演時間短くなってすみません。
  私が原因です…25分の予定が熱く語って10分オーバーしたため。


「オルガヘキサの効用」
 相田英文(セラスメディコ代表取締役社長)
  
  植物由来のセルロースを原料に、その繊維質を特殊製法で100%炭素繊維化
  した物質。産業用大麻が事業化すればその一つの商品例として紹介。

→ 参加者100名だけ、2万円相当の黒い布(オルガヘキサの布)をプレゼント。
  今後とも麻をよろしくお願いします。

 展示コーナー: いろんな方が熱心に見ていた。

●交流会、2次会、3次会へ

さて、こういうイベントは、シンポジウムよりも交流会が「命」である。
北海道の各地から参加者がいたようである。また、行政関係者も多数来ていた
ようである。とにかく、この大麻というテーマが、人々の魅力を引きつけている
のは間違いない。

産業用大麻が、認知されないのは、大麻に「いい点」があるということを認めた
くない勢力が存在し、その人たちが情報統制権力を握っており、それを打破する
には、いろんなことをしていかなければならないのように思われる。
まさに、武田先生がいうところの「日本人で大人がいかに増えいくことができるか?」
がポイントである。

さらに、この200名規模の講演会では、ホテルの格式ある場所の雰囲気のため、
ちょっと言えなかったことが2次会では発表できた。
それは、武田先生を除く、講演者3名+織姫(女性)1名で「フンドシ(褌)」であり、

「環境問題の解決は、足元ではなく、股元からであること」であった。

北見の方々には、男性のみならず女性が褌姿というのは面食らったようだが、
それがファッションブームになりつつあるという新しい風を十分に伝えるこ
とができた(笑)。

しかも、北見市では、宮古島市と青年会議所で交流があり、また北見で褌姿で大綱引き
大会があるという。今後は、これを御縁に北と南で、大麻の綱で、大麻の布の褌で、
綱引き合戦企画をぜひしてもらいたい。

→ 北見市の皆さんは、褌に抵抗を示していたが、既にみんな褌経験者だった?!

 オホーツクの流氷 (観光名物ですね)

●まとめ

北見市の方々に対して、産業用大麻栽培特区が全国各地の先進事例として注目されている点、
褌こそが「日本人が大人になる時」である点、

この2点を伝えらえたような気がする。
さて、こんな大規模にやったからには前進あるのみである。





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