ふぁーみんぐ通信10年1月号
  アメリカの産業用大麻の現状オバマになって変わったか?
                     〜アメリカの政策を見るの巻〜 



●2009年になってから州法で産業用大麻法案を9州で可決


アメリカの産業用大麻を推進し、情報提供をおこなっているサイト”VoteHemp”より、現在の状況をまとめてみた。



200910月現在
産業用大麻栽培法において28州の草の根運動があり、16州が法案を提出し、9州(ハワイ、 ケンタッキー、 メイン、 メリーランド、 モンタナ、 ノースダコタ、 オレゴン、 バーモント および ウェストバージニア)は、生産や研究への障壁を削除しました。

但し、最終的には、1970年に制定された薬物規制法(連邦法)でオーケーにならないと、州法で保証されていても農業者はいつ連邦警察(FBI)の取締対象になるかをビクビクしながら栽培することになる。

そのため、連邦議会に対して、下記のような提案がされている。

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●第111会期 第一セッション H.R.1866
(H.R.議案ナンバー=House of Representatives:アメリカ下院議会の議案という意味です)

タイトル:マリファナの定義から産業用大麻を除外し、他の目的のために薬物規制法を改正する。
主催代表:ロン・ポール(テキサス州)2009年4月2日 賛同15名
最新状況:2009年5月26日下院小委員会参照。犯罪、テロ及び国土安全保障小委員会を参照。

法案
マリファナの定義から産業用大麻を除外し、他の目的のために薬物規制法を改正する。
それは、アメリカ合衆国の上院と下院の議会招集によって成立させて下さい。

セクション1 短いタイトル
この法律は、「産業用大麻栽培法2009」と引用されます。

セクション2 マリファナの定義から産業用大麻を除外

薬物規制法(21 U.S.C. 802(16))の第102節の項目(16)を改正
(1)はじめの (16)に当たり、(16)(A)を挿入。
(2)末尾に次の新しい小段落を追加

(B)用語「マリファナ」は産業用大麻を含まない。前述で使われた用語「産業用大麻」は、植物Cannabis sativa L.を意味し、植物の任意の一部において、生長するかしないかに関わらず、デルタ-9テトラヒドロカンナビノール濃度が乾燥重量ベースで0.3%を超えないことを意味する。

セクション3 州によって作られた産業用大麻の裁定

薬物規制法(21 U.S.C. 811)の第201節は、末尾に次の新しい項目を追加して改正される。

(i)州によって作られた産業用大麻の裁定−刑事訴訟、民事訴訟、行政手続、州法のもとで産業用大麻の栽培及び加工処理の州規制は、どの植物が第102節の項目(16)の小段落(B)で述べた濃度制限に合うか、その決定は拘束力があり、最終的となる排他的な権限がある。

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次にこの法案を提出したバックグランドになっているアメリカの議会調査局が発行する
議会研究サービスレポート(CRS Report for Congress)を見てみましょう。
アメリカの産業用大麻に関して評価した公的な文章です。
簡潔ですが、お隣のカナダの事情も詳しく書いていて、とっても参考になります。


●農業的価値のあるヘンプ CSR Report for Congress(2007年3月)
  

概要
2007年2月にアメリカ合衆国での産業用大麻の商業栽培のための道を切り開く法律(H.R. 1009:第109会期, H.R. 3037)が紹介された。2007年の産業用大麻栽培法は、「マリファナ」という用語が産業用大麻を含まないと指定するために薬物規制法のセクション102 (21 U.S.C. 802(16))を修正するだろう。そのような変化は、連邦法において生産者が州の規制のもとで、州内に産業用大麻を栽培し加工処理できるかどうかを決定することを意味する。現在、連邦麻薬取締局(DEA)は、州法のもとで認可された産業用大麻が受け入れられるかどうかを決定し、それは作物栽培において安全な状態を管理する基準をもって施行している。

用語「ヘンプ」と「産業用大麻」は、それらの葉と花に精神活性物質(テトラヒドロカンナビノール又はTHC)の低い濃度によって特徴付けられたカンナビス属の品種を示す。世界中の総産業用大麻の面積はわずかであるが、30以上の国の農業者は、繊維、種子及び食品を含む様々な工業製品や生活用品に使うために栽培している。

 カンナビス(実際にはアメリカでどこでも生長できる)の数種類の精神活性のために、連邦政府は、1930年代後半に、マリファナ課税法(50 Stat. 551)に基づいて生産を規制しはじめた。
1970年に、THC含有と用途に関わらず、すべてのカンナビス属の品種の生産が薬物規制法(21 U.S.C. §§802 et seq.)によって厳しく規制されるようになった。その結果、今や全てのヘンプ又はアメリカに販売されているヘンプを含んだ製品は、輸入するか、輸入されたヘンプから製造しなければならない。1990年代前半に産業用大麻の商業栽培を認めることに関する興味の高まりがアメリカではじまった。タバコや小麦のような一つの作物に非常に依存する地方の農業者は、たとえ経済学の研究において複雑な収益性の見通しであったとしても、高付加価値の代替作物としての可能性について興味をもつ。過去10年間、25以上の州が経済又は生産研究を求める法案を可決している。

 連邦麻薬取締局(DEA)は、研究目的(いくつかの州法で認可されている)のためのヘンプの小規模に栽培するための免許を与えたがっていない。そして、THCを微量に含むヘンプ食品の輸入を禁止するために、研究が1999年にはじまり、好ましくない判決に従って2004年に放棄された。DEAの職員は、商業栽培が高いTHCマリファナのひそかな生産の可能性を広げ、DEAの監視と実施活動を複雑にして、ドラッグの政府の位置づけをアメリカ一般市民に間違ったメッセージを送ることに関心を述べている。


●農業的価値のあるヘンプ(詳しい解説)

序論

何世紀もの間、植物名のカンナビス・サティバは、様々な工業及び生活用品を生産するために世界中で使われた繊維及び油糧原料であった。現在、30以上の国が産業用大麻を農作物として栽培している1)。それらの約14か国が生産の一部を世界市場で販売している。用語「大麻」と「産業用大麻」は、特に葉と花穂において低レベルのテトラヒドロカンナビノール(THC,マリファナの第一精神活性の化学物質)によって特徴付けられたカンナビスサティバの品種を示す2)。フラックス(亜麻)のように、1つの用途もしくは他により適した品種で、繊維と種子の両方を生産できる植物が開発された。栽培方法が品種によっても異なる。

大麻繊維は、カーペット、家具、建材、自動車部品、織物、紙を含む様々な製品に使用できる。麻の実(油糧種子)には、潤滑油、化粧品、製薬、食品を含む様々な用途がある3)。この作物は、1800年代半ばにヘンプから粗いものから細かい織物、糸及び紙は今と共通した用途であり、植民地時代からの合衆国で広く栽培されていた。しかしながら、1890年代までに、綿が収穫の省力機械によって、織物の原料として競争力をもち、粗い天然繊維の需要は、輸入によってまかなわれた。1914年から1933年の間、精神作用の効果ためのカンナビスの花穂と葉の使用を止める動きがあり、製薬及び産業の目的で生産することを制限する法律を33の州で可決した4)。

1) In this report, “hemp” refers to industrial hemp, “marijuana” (or “marihuana” as it is spelled in the older statutes) refers to the psychotropic drug (whether used for medicinal or recreational purposes), and “Cannabis” refers to the plant species that has industrial, medicinal, and recreational varieties. This report does not cover issues pertaining to medical marijuana. For information on that subject, see CRS Report RS20998, Marijuana for Medical Purposes: A Glimpse of the Supreme Court’s Decision in United States v. Oakland Buyers’ Cooperative and Related Legal Issues.
2)The European Union (EU) and the Organization for Economic Cooperation and Development (OECD, which includes Canada) use 0.3% THC as the dividing line between industrial and potentially drug-producing C. sativa: cultivars having less than 0.3%THC legally can be cultivated under license, cultivars having more than that amount are considered to have too high a drug potential. A THC concentration of 1% is considered sufficient to have a psychotropic effect. Source: Ernest Small and David Marcus, “Hemp: A New Crop with New Uses for North America,” in J. Janick and A. Whipkey, eds., Trends in New Crops and New Uses (Alexandria, VA: Amer. Soc. of Hort. Sci. Press, 2002).Available online at [http://www.hort.purdue.edu/newcrop/ncnu02/v5-284.html].
3) The term “hempnut” is used frequently to refer to shelled hemp seed used for food. The Industrial Hemp Information Network (HemptechTM) offers an online list of available hemp fiber, seed, and oil products, and their suppliers at [http://www.hemptech.com].
4) Richard J. Bonnie and Charles H. Whitebread, The Marihuana Conviction: A History of Marihuana Prohibition in the United States (Charlottesville: University Press of Virginia,1974), p. 51.

●1937年から現代までのカンナビスの法的な位置づけ 

 1937年に議会は、まだ作物の工業利用を可能なときにマリファナのためのカンナビス生産を阻止する最初の連邦法(大麻課税法 50stat 551)を可決した。この法令の下で、政府は第二次世界大戦の間、繊維とオイルのために農業者に大麻を栽培するよう奨励した。戦後、合成繊維との競争、大麻課税法、増加する大衆の反ドラッグ感情により大麻の栽培がより少なくなり、1958年以降は全く栽培されなくなった。過去10年間でアメリカでは産業用大麻を生産する興味への復活があった。タバコや小麦などの1つの作物に大きく依存する地域の農業者は、たとえ経済学の研究において複雑な収益性の見通しであったとしても、高付加価値の代替作物として大麻の可能性について興味を示した。

 1995年頃に、複数の州議会が産業用大麻に関連する様々な第一歩を考え始めた。これらの大部分は科学的、経済的、環境的な研究を求める決議であり、州法の下で実験的栽培を認可する法律である。それにもかかわらず、実験目的のために認可されたカンナビスの実際の栽培は、1970年の薬物規制法(Title II of P.L. 91-513 (21 U.S.C.§§802et seq.))の下で連邦麻薬取締局(DEA)によって規制される。議会は、薬物規制法(CSA)に基づき、1937年に採択されたカンナビス・サティバの同じ定義を採用した。


●CSAの定義を読むと、

 用語「マリファナ」は生長するかしないかに関わらず、その種子、その植物のどんな部位からも抽出された樹脂(あらゆる化合物、製造物、塩類、派生物、混合物、その植物の調製、種子又は樹脂を含む)、植物Cannabis sativa L.のすべての部分を意味する。その用語は、その植物の茎、茎から生産された繊維、油又はその植物の種子、他の化合物からつくられた固まり、熟した茎(そこから抽出された樹脂を除く)の調製、繊維、油、発芽不能なその植物の殺菌された種子は含まない。

 その状態は、「マリファナ」の用語の下で 低いから高いTHC品種の間で区別を全くせず、カンナビスの植物すべての品種を規制することを保持している。産業利用を意図している―熟した茎、オガラ、繊維、油、堅い殻など―は規制対象外である。厳密に言うとCSAは、カンナビスを違法にしていない。むしろ、DEA許可なしで作物を栽培することを違法にし、最も厳しい規制としている。DEAは、1990年代(現在は期限切れ)にハワイで実験のために許可証を発行したが、それ以来、発行していない。アメリカで販売されているすべてのヘンプ製品は、輸入されたものか原料を輸入して製造されたものである。1999年に可決された州法の下で、ノースダコタは、国内で産業用大麻の生産を認可する最初の州となった。ノースダコタ州立大学の研究者は、2度申請したが、DEAは許可を認めなかった。2007年1月に、大麻生産を認可するときに、ノースダコタ農務省は、最終的な規則を発行した。州に認可された生産者からの許可証の申請書がDEAでそのまま保留にされている5)。

5) Information on North Dakota’s requirements for licensing hemp production is available
at [http://www.agdepartment.com/Programs/Plant/HempFarming.htm].


●最近の立法活動

 2007年2月にロン・ポール代表は、第110議会で産業用大麻栽培法を紹介した。(最初に2005年6月にH.R.3037として第109回議会で紹介した)これは、アメリカで産業用大麻の商業栽培を容易にすることを連邦レベルで最初の立法提案である。法案は、薬物規制物法(21 U.S.C. 802(16))の改正を予定している。「マリファナ」という用途は産業用大麻を含んでいないと言葉を追加する。法案は、下院のエネルギー・商業委員会と司法委員会で参照された。制定されるなら、法案は、薬物規制法に基づく連邦法による優先権がなく、州法に基づく産業用大麻の生産を可能にするだろう。法案は、薬物規制法においてTHC濃度の制限に適したカンナビスサティバの植物であるかどうかを決定して認可することを産業用大麻の生産の州に独占的な権限を与える。刑事上、民事上、行政手続き上、州の決定は、拘束力がある6)。

6) Further questions on the legal aspects of H.R. 3037 should be directed to the CRS American Law Division.


●海外のヘンプ生産とアメリカの消費

 ヨーロッパ、アジア、北部及び南米の30の国が、多くは過去に生産を禁止していたが、現在、大麻を栽培する農業者に許可している。最近、信頼でき、世界中の産業用大麻の生産に関する集められたデータは、利用可能ではない。アメリカは、産業用大麻が受け入れられない唯一の先進国である。イギリスは、1993年に禁止令を撤廃し、ドイツは1996年に先例にならった。EUは、共通農業政策の下でヘンプ繊維生産に補助金を支給する7)。それにも関わらず、栽培される先進国では、一般的に産業用大麻はマイナーな作物であると考えられている。

 1998年にカナダでは、3年間の実験期間と50年の禁止を経て、商業目的のために生産を認可した。産業用大麻を栽培する免許を受け取る条件として、農場のGPS座標の登録し、公認された低THCのヘンプ種子を使い、THCレベルを政府の作物検査し、食用種子にTHC最大許容の10ppm基準を満たさなければならない8)。カナダ保健省(生産のために免許を発行する省)は、2005年に24000エーカー(9600ha)、2006年に48000エーカー(19200ha)の栽培と報告した9)。

 アメリカで輸入及び販売されたヘンプをベースにしたすべての製品の小売価格は、正確に見積もることは難しい。いくつかの輸入は、種子、油、糸、織物など、例えば、建材、カーペット、紙のいくつかの異なった分野でUSDA(アメリカ農務省)の貿易データべースに代表されるかもしれないからである。データベースは、実際に「ヘンプ」とラベルされたカテゴリーで、アメリカの輸入は2005年に670万ドル(6億7千万円、CIF価格ベース)、2006年に630万ドル(6億3千万円)であったことを示している10)。

 アメリカへのヘンプの原料及び加工された繊維の輸出業者は、中国、ルーマニア、ハンガリー、イタリア、カナダ及びインドである。ヘンプの種子と油の主な輸出業者は、イギリス、カナダ、スイス及び中国である。USDA貿易データベースは、カナダのアメリカへのヘンプ種子の輸出が、2004年後半にヘンプ食品のアメリカの輸入に関する長年の法廷紛争に終わった、2004年の0から2006年に120万ドル(1億2千万円、CIF価格ベース)まで成長したのを示している11)。

7) A search under the term “hemp” on the European Union Commission on Agriculture
website [http://ec.europa.eu/agriculture/index_en.htm] leads to information on the support program.
8) Health Canada regulations for obtaining permits are viewable online at
[http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/substancontrol/hemp-chanvre/index_e.html]. Additional
information is available on the Canadian Food Inspection Agency website at
[http://www.inspection.gc.ca/english/plaveg/seesem/indust/hemchae.shtml].
9) Agriculture Canada, “Canada’s Industrial Hemp Industry,” March 2007, available online
at [http://www.agr.gc.ca/misb/spcrops/sc-cs_e.php?page+hemp-chanvre].
10) USDA, Foreign Agricultural Service, “U.S. Trade Internet System: Imports.” Available
at [http://www.fas.usda.gov/ustrade/].
11) Ibid.


●ヘンプ食品の輸入に関する法廷紛争

 1999年後半に連邦麻薬取締局(DEA)は、アメリカの税関サービスがすべての輸入されたヘンプ及びヘンプ食品のTHC含有量の許容度ゼロを実施するために行政上の行動をした。DEAは、2001年10月に、許容度ゼロ基準の基礎となる官報(66FR 51530 )の解釈規則を公表した。議会は、1937年のマリファナの定義を「現在、THCとして知られている精神活性の物質のいずれも含んでいないという仮定(現在は論破されている)に基づいて、マリファナの定義からカンナビス植物のある部分を除外する」と書いて成立した12)。DEAの解釈は、規制物質としての実施を条件としてTHCを含まない大麻をつくった。

 ヘンプ産業貿易グループ、小売業者及び主要なカナダの輸出業者は、DEAに対して訴訟を起こした。THCの非精神活性レベルが自然に含まれる植物の部分において除外することであり、同じように自然にある鎮静剤の微量を含むケシ種子は除外されていると主張した。(21 U.S.C.§802 (19)(20)) 産業グループは、(1)繊維と食用のために栽培されたカンナビスの品種の葉と花の自然に発生しているTHCは、すでに精神活性レベル以下(ドラッグの品種と比較して)である。(2)食用目的(種子及び油)のために使う部位は、さらに少ない。(3)処理後、THC含有量がゼロまたはゼロ近い。アメリカとカナダのヘンプ種子と食品製造業者は、ヘンプを含む食品で産業的に決められた基準、低いことを確認するための自主的なプログラムをもっている13)。

 2004年2月6日に、第9巡回区アメリカ連邦高等裁判所は、最終的な規則(68 FR 14113, published March 21, 2003)の実施を下した。裁判所は、「DEAのTHCの定義は、CSA(薬物規制法)で議会に明白に言い表した意図に違反して、是認できない」と述べた14)。政府が控訴するかもしれない可能性が数カ月間あったが、2004年9月下旬に、出願せずに最終的な締め切りが過ぎた。

12) Both the proposed rule (which was published concurrently with the interpretive rule) and
the final rule gave retailers of hemp foods a date after which the DEA could seize all such
products remaining on shelves. On both rules, hemp trade associations requested and
received court-ordered stays blocking enforcement of that provision. For more information
on the legal history of hemp, contact the CRS American Law Division.
13) Background information on the TestPledge Program is available at [http://www.
TestPledge.com]. The intent of the program is to assure that consumption of hemp foods
will not interfere with workplace drug testing programs or produce undesirable mental or
physical health effects.
14) Hemp Industries Association v. Drug Enforcement Administration, 357 F.2d (9th Circuit 2004).


●ヘンプの経済性の分析及び評価

 ヘンプの提案者は、工業、生活用品、農業者のための有益な代替作物ついて可能性のある広い構成要素としての潜在的価値があり、合法化するための経済的議論に基づいている。彼らは、商業的なヘンプ産業がそれ自身の有益なニッチ市場を発生させ、すでに従来のまたは代替の商品がすでに存在している輸入されたヘンプの現在の用途で、将来の収益性の見通しが、より大きな可能性をもつことを無視していると主張する。

 また、産業用大麻の合法化のいくつかの支持者は、第二次政界大戦おける役割に沿って、防衛準備目的のための戦略作物としての価値が復活したと主張する。1994年に、クリントン大統領は、国防の準備に適した工業及び技術の基礎を強化することを意図した大統領令EO12919「国防工業資源の準備」を発行した。大統領令は、「食用資源」のカテゴリーにヘンプを含み、それは「すべてのデンプン、砂糖、野菜、動物、海洋の油脂、コットン、タバコ、羊毛、ヘンプ、亜麻、繊維と農業製品として本質を失わないその他の材料」と定義した15)。政府は、産業用大麻が有事と同様に、平和時にアメリカの国防準備に貢献できるとすでに認めたと主張できた。

 産業用大麻の敵対者は、アメリカの農業史が有益な商業利用において代替作物を約束することがたいへん難しいと指摘する。1930年後半以来、アメリカ農務省(USDA)は、一般的な商品の代替作物及び工業利用の研究を支援している。現在、1984年の重要な農業材料法(P.L. 98-284)の下で、1985年と1990年の包括的農場政策による代替食糧作物に関して、連邦政府はUSDAと州試験場で代替作物の研究と開発に毎年約1500万ドルを支援した16)。いくつかの作物がアメリカのある地域で確立するようになったいくつかの作物−例えば、カルフォルニアとアリゾナのケナフ(繊維用)、ホホバ(油用)、グレートプレインズ州のアマランサス(栄養価の高い穀物)− は、ヘンプと同じような利益をもつ、しかし、これらは同じ種の中にドラッグの品種をもたないのでヘンプのように複雑ではない。有益な作物としての産業用大麻のアメリカの農業者の可能性についての最初の経済分析の一つは、2000年にUSDAの経済調査部(ERS)によって作成されたレポートであった。ERSは、種子と油を除いて、ヘンプ繊維、糸、織物を含む輸入データを国内で生産する仮定をベースにした。そのレポートは以下のことを結論づけた。
 
ヘンプ繊維及び種子のアメリカの市場は、おそらく小さい市場のままである。ヘンプ製品を求める長期需要と供給過剰の可能性に関する不確実性は、アメリカの農業者にとって経済的に実行可能な代替作物としてのヘンプの見通しを計算にいれない17)。

スモールとマーカス(2002)によるより最近の研究では、アメリカでその作物への関心がERSが否定的予測について計算してからもっと進歩があるという事実を述べている。その結論は、

 新しい農業作物に関連する産業が熟するのに10〜15年かかる。外国輸入が少なくとも10年間、北アメリカのヘンプ製品に基づくのは事実であるが、北米の生産はカナダで4年だけである。この見解から、北アメリカのヘンプ産業はまだ始まったばかりで、しばらく小さいニッチ市場に固有のリスクを経験し続けていくようである。
(しかしながら)ヘンプは、可能な用途の多様性をもち、非常に熱心な市場開発者によって促進されていて、相当な注意を引きつけるので、それを認めたくない方が思っているより北米の市場をはるかに大きいシェアを開拓しそうである18)


カナダ農業からの2003年12月の2007年に更新されたレポートでは、消費者の関心に基づき、さらに積極的な結論に達している。

ヘンプの優位な利点は、十分にある:除草剤なしで生長でき、土を蘇らせ、綿より少ない水、3〜4か月で成熟し、それは同じ面積当たりで木の4倍の紙を得ることができる。ヘンプは、木やコンクリートより2倍強い建材、綿より強い織物繊維、石油よりクリーンなディーゼル燃料、生分解性プラスチックをつくることができる。さらに、他の食糧原料よりも1エーカー当たりの家畜の飼料をつくることができる。これらの利点は、今日の北米の大衆の環境と健康志向と一致している。消費者の拡大する関心、農業者と加工者によって示された関心及び産業用大麻のカナダの著しい増加は、未来に楽天的な見方を許容する19)。

 カナダヘンプトレード連合(CHTA)によると、カナダの従来の油糧作物のための貿易、収穫、販売及び加工技術は、種子のための栽培の取扱いに適しており、市場を見つけるとすぐに種子の面積を広げた。ヘンプ種子の有機認証を得た農業者は、割り増しの価格を受け取る。CHTAは、1ポンド当たり50〜60セント(カナダドル)の相場及び公認された有機認証の種子は85セントの相場を報告した。

 一方、カナダのヘンプ繊維工業は発達していない。1998年に再び生産が合法になると、政府と財団が繊維の品種を育種する研究、収穫と加工に関連する問題に対して助成支援を始めた20)。だが、重くて、嵩張る生産物を効率的に輸送及び取り扱うためのインフラが遅れているのである。CHTAは、「ヘンプの現在の経済的な価格では、廃棄物(木、藁、穀物の茎葉など)と競合できない、ヘンプは、廃棄物の繊維では、適正な製品と市場に届かなければならず、4〜10回使って評価される。」と述べている。アメリカの商品作物として再導入するヘンプの提案者は、カナダの経験を観察している。しなしながら、またより大きな構想を見守るのも重要である。現状ではヘンプ製品の世界市場は比較的小さい、世界で最も大きい繊維と種子の生産者である中国は、他の国の生産者や加工者の利益や市場価格に大きな影響をもち、おそらく今後も持ち続けるだろう21)。ヘンプ種子と油の北米市場でカナダの有利なスタートは、おそらくアメリカの新しいヘンプ企業の収益に影響するだろう。

 少なくとも当分の間、問題に関する政府の政策は、商業的な大麻の生産に対するDEAの議論が反映される。それは「商業栽培が高THCを含むマリファナの隠れた生産の可能性を増やし、DEAの監視と取締を複雑にし、アメリカの大衆に政府のドラッグに関する方針に誤ったメッセージを送ることになるだろう」ということである。また、DEA職員と他の様々なオブザーバーは、大麻を合法化するための努力−同じように医療大麻を合法すること―は、本当の目的がマリファナ解禁を見据えた個人及び組織の前段的取り組みであると表現される22)。

15)For more information on this EO and on the laws that relate to the production, shipment,
importation or regulation of hemp in the United States, call the CRS American Law Division
16) USDA/Agricultural Research Service Budget Office and USDA Explanatory Notes for FY2007.
17) U.S. Department of Agriculture, Economic Research Service, Industrial Hemp in the
United States: Status and Market Potential, ERS Report AGES001E, January 2000.
18) Small and Marcus, p. 321.
19) See footnote 9.
20) One example of recently begun hemp fiber research is a collaborative effort of the
National Research Council of Canada and Hemptown Clothing, Inc., to develop a new
enzyme technology to produce a softer and whiter hemp fabric, among other things.
Information from the Research Council is available online at
[http://www.nrc-cnrc.gc.ca/highlights/2004/0407hemp_e.html].
21) T. Randall Fortenbery and Michael Bennett, “Opportunities for Commercial Hemp
Production,” Review of Agricultural Economics, vol. 26, no. 1 (spring 2004), pp. 97-117.
The time period covered in this study ends with the year 2000.
22) For more information on legislative and executive branch actions concerning illegal drugs,
see CRS Report RL32352, War on Drugs: Reauthorization of the Office of National Drug
Control Policy. For information on issues pertaining to medical marijuana, see CRS Report
RL33211, Medical Marijuana: Review and Analysis of Federal and State Policies.


●解説の解説

日本の報道では、全く触れられていなかったが、オバマ氏の公式サイトで、
大統領選中の次期政権への市民の提言を集めた「チェンジ・ガバメント」の
ベスト3がある。それをみると、

第1位 92970ポイント  マリファナの禁止を止めること
第2位 70470ポイント  世界で最も環境に配慮した国になること
第3位 66170ポイント  連邦法による医療大麻施用の州法への弾圧を止めること

アメリカ国民は、オバマ大統領に、大麻のことと環境のことを求めているのである。
環境のこと=産業用大麻の解禁まで含むと、1〜3位は、すべて大麻政策の変更を
オバマに求めていると解釈できる。

実際に、第3位は、2009年10月19日にホワイトハウスの声明として、州法で医療大麻が
合法となっているところ(13州)に連邦警察による弾圧は止めると公式に発表した。
Memorandum for Selected United State Attorneys on Investigations and Prosecutions in
States Authorizing the Medical Use of Marijuana http://blogs.usdoj.gov/blog/archives/192

すばらしい!、アメリカ国民の求めたものを1つ実現した。さて、あとの上位2つはどうする
オバマさん???

 さて、この議会レポートは、2007年の段階で、アメリカ国内のヘンプ産業に対する状況について、
カナダの実践例を見ながら、冷静に見ている感じがする。特に新しい市場が立ち上がるまで、紆余
曲折があり、10〜15年かかるという見通しは、正しい認識である。

 カナダは、アメリカの健康志向にターゲットを絞って、種子の食品利用と化粧品利用に力を入れてい
る。そのため、繊維を加工して販売するというビジネスモデルは、次の段階の課題である。
同じくカナダは、木材加工産業が世界一の規模を誇るため、ヘンプ産業が、木材分野と競合する
建築系の商品においては、対抗する競争力をもつまでには、かなり時間がかかると考えられる。

当面、このレポートを読んだ方は、アメリカの連邦法の改正が、実現できるかどうかを今後も
見守らなければならない。アメリカの解禁は、日本の解禁に大きな影響をもつ。
(実質的なアメリカの51番目の州「Japan state=略称:JP」だから)

詳しい動きをウオッチしたい方はこちらのサイトをみましょう。

VoteHemp http://www.votehemp.com

翻訳:赤星栄志(ヘンプ読本著者) 
     この手の海外レポート翻訳を手伝ってくれる人を随時募集しています。

以上





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