ふぁーみんぐ通信10年4月号
         大麻草は「生態系サービス」の模範的作物 
                  〜生物多様性条約の国際会議に向けての巻〜




●生態系サービスって何??

生物多様性と私たちの暮らしの関係を体系的に、わかりやすくした言葉です。
国連のミレニアム生態系評価の報告書(2005)が提唱した新しい言葉です。
つい、最近まで環境業界にいる人たちだけの専門用語でしたが、生物多様性条約
の国際会議が名古屋で2010年10月に行われることから、ようやく注目されるように
なりました。




私たち人間は、地球上のあらゆる生命の多様性から様々なサービスを
受けて生きているのです。
地球そのものが、人間の生命維持システムとして働いているのです。

当り前のことですね。人間は、宇宙空間で生きていくことが無理で、
地球上にしか生息できない種ですから。


●生態系サービスとは?

地球上の生命ー生物多様性が生み出す人間へのサービスは大きくわけて4つ
 
@供給サービス:食料、水、木材、繊維、燃料etc
A調整サービス:気候調整、洪水制御、疾病制御、水の浄化etc
B文化的サービス:審美的、精神的、教育的、レクリエーション的
Cこれらを支える基盤的サービス 土壌の維持



●人間と生態系サービスの影響




本来は、人間圏(ヒトが生きていくための空間)は、生命圏の中にあったはずなのですが、
産業革命以降からどんどんと拡大し、第二次世界大戦後はまるで生命圏から独立して
いるような状況です。

生命圏:独自の循環ががある成熟したシステム  20億年の歴史がある!

人間圏:独自の循環がない未熟なシステム   たったの60年の歴史しかない!

人間圏は、いまや生命圏から生態系サービスをお金をつかって買って、廃棄する
という関係になっています。
人間圏が、生命圏に大きな影響をもたらすぐらいに拡大しているのが大問題です。

人間圏だけで循環型社会をつくるのは限界があるのです。
もう一度、生命圏に人間圏はもどれるのか?
これが持続可能な社会づくりのキーワードなのです。


●生態系サービスの基盤が崩壊中!

地球史上、過去に5回の大絶滅がありました。例えば、有名なのは恐竜大絶滅!。
今回は、第6回目の大絶滅期中の時期なのです。しかも、生物の絶滅速度
は過去の100〜1000倍と報告されています。




この現在の第6回目の大絶滅は、人間活動が原因と専門家の間では特定されています。

地球温暖化問題の方が有名になっちゃいましたが、生態系の崩壊の方が大問題です。


●大麻草は、生態系サービスの模範的な作物です


大麻草が提供できるサービス  
@供給サービス    衣料、食品、化粧品、紙、 
 建材、複合素材、敷料、肥料、  
 飼料、燃料、医薬品etc
A調整サービス   大気、土壌浄化、炭素固定、病害虫抑制、
 除草剤不使用、砂漠化防止(土壌改良)etc

B文化的サービス  神聖な植物(宗教的)
 伝統文化、嗜好品etc


なぜ、大麻草は、生物系サービスの観点からみるととても模範的な作物です。
人間にとっては、衣食住の素材を供給する作物であり、近年では医療大麻という分野で
医薬品の原料にもなっています。これは今のエコロジーやオーガニックという意味から
注目されているだけでなく、そもそも昔から人類はこの作物の恩恵を受けてきたと
いえるのです。

大麻草は、3か月で3mに生長し、土壌浄化機能があり、無農薬栽培できる稀有な作物です。
無農薬で育つのは、大麻草にTHCとCBDと呼ばれるカンナビノイド成分があり、これが
植物や昆虫の細胞死(アポートシス)を促すからなのです。
このことは最近の研究で九州大学薬学部によって明らかになっています。

よく、大麻草を植えた後には、雑草が生えにくいとか、まず開墾したところには、大麻草を撒くとよい
と昔から言われていたことが、このカンナビノイド成分であることがわかってきたのです。

沙漠防止にも役立ち、もともと中央アジア原産で乾燥地帯のところの遺伝子をもっているため、
年間降水量400mmという半砂漠地帯でも栽培することできます。

地下水が流れて入れば100から200mm程度の年間降水量でもなんとか育つことが報告されています。
沙漠緑化に大麻草を使うという技術は、まだそれほど確立しているわけではありませんが、
今後の面白い使い方の一つでもあります。


文化的サービスは、日本おいては、神社をはじめとした神事に使う材料であることが挙げられます。
罪穢れを払うという役割があると考えられています。
今は、大麻草を所持していたら、罪になる!!という変な社会ですが、
大麻取締法の規制が、日本の伝統的価値観=大麻草は罪穢れを払う を壊している側面が
あることは明らかです。

日本はアルコール文化圏ですが、イスラムやインド、ジャマイカ、メキシコ、タイ、ラオスなどの
亜熱帯と熱帯地域は、マリファナ文化圏です。

大麻草の喫煙=マリファナは、世界的に規制対象となっていますが、これは温帯から寒帯の
寒い地域の国々のアルコール文化圏が世界の主導権を握っているからにすぎません。

亜熱帯や熱帯地域のマリファナ文化圏が、仮に先進国で世界の覇権を握っていたら、
アルコールは全面禁止されていたという見方もできるのです。

グローバリゼーションの中で、文化の衝突、文明の衝突がいろんなところでありますが、
このアルコール文化圏とマリファナ文化圏もその一つと言えそうです。

マリファナ文化圏があるとうこと自体、生態系サービスの視点からみると、文化的サービスを
人間に提供しているといえるのです。

このように、供給、調整、文化的とそれぞれから大麻草は非常に有益であることがわかります。
生物多様性は、大麻草だけで成り立つわけではありませんが、大麻草のような万能植物を
事例にすると、人間と自然とのつながりをどう考えればよいかのとてもよい教科書的な教材
になるのです。

<結論>
大麻草は、生物多様性と人間の関係をもう一度見直すためのとても
よい教材です
だから、私たちは、大麻草のことをもっとよく知る必要
があるのです。



環境白書19年度より 生態系サービスとは
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h19/html/vk0701020100.html

生物多様性条約第10回締約国会議(COP10) →名古屋で実施されます。
http://www.cop10.jp/aichi-nagoya/






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