11年6月号


          世界一の長寿の里・巴馬(バーマ)
          ~中山康直と行くツアーの巻~




●ツアーの参加者

 6月13日から19日に中国の南西部の広西チワン族自治区の巴馬(ばーま)ツアーを企画した。
巴馬は、麻の実を食べて100歳長寿村として世界的に有名なところである。
1999年にフジテレビで巴馬の郷土食に麻の実が紹介されており、最近では、2,009年5月に女優の
吉本多美香とともにNHKのBSで「世界で一番長生きが多い里 ~中国・巴馬~」というタイトルで90分
のドキュメンタリー番組として紹介されている。
健康長寿が時代のキーワードとなる中、巴馬の人の知恵に学ぶツアーでもある。

最初は、中山康直氏の主催する「いやさか塾」の塾生対象としていたが、思ったよりも人が集まらずに、
急遽、幅広く呼びかけて、ツアー1ヶ月前にようやく総勢24名、通訳と現地スタッフいれて27名前後に
なった。

 環境雑誌のソトコトがアフリカツアーでお世話になっている旅行企画会社のジャパトラの方もはじめての
巴馬ということで一緒に参加していただき、中身も参加者も濃いメンバー構成であった。
私は、2010年夏にソトコトスタッフと一緒に巴馬の麻調査のために訪問しており、今回は2回目。
ちょっと心に余裕をもってツアーへの参加であった。

※文中にでてくる火麻(ひま)=大麻草の中国語名。巴馬地域ではそのように呼んでいる。


●6月13日(月) 南寧へ 農業試験場の中にある野菜レストラン

最初に、広西チワン族自治区の一番の都市である南寧(なんねい)に到着。
この自治区の農業試験場では、巴馬の火麻の栽培と育種の研究をしている。

この試験場にある経済作物研究所の所長である唐さん(46歳)に広西チワン自治区の火麻についての話を伺いました。研究所では、1956年から様々な繊維作物の研究をしている。現在は、37人の研究員、10名前後の博士、
修士などの研究生を抱え、火麻は5名で研究をしている。火麻については、2001年頃から研究所独自に
研究を実施。巴馬の火麻は、原始的な栽培方法であり、生産量が高くなく、生産効率が悪いという
問題を抱えている。火麻の収量を上げて、農民の生活向上に貢献するために研究を始めたという。

到着したのが夕方だったので、この試験場の敷地内にある八桂田園レストランで食事。
地元の野菜たっぷりで、しかも試験場が開発した品種の野菜やらなんやらで、めちゃくちゃ飯が美味かった。




●6月14日(火) 巴馬へ 長寿博物館見学

巴馬が長寿の里として有名になったのは、実はある日本人の医師の研究からである。
今では、自然医学として知られている森下敬一博士の長寿研究の成果といっても過言ではない。
長寿博物館でもその功績が称えられていた。



さて、現地の長寿研究所の方によると、第一に自然環境の力、第二に食べ物の力を取り上げている。
自然環境では、地場のエネルギーがほかは0.1ガウスのところが巴馬では0.5―0.9あること、水がアル
カリイオン水であること、マイナスイオンが多いことであるという。また、食べ物の力には、五低二高、
五多五少という言葉でまとめられている。

五低二高:低カロリー、低脂肪、低動物性タンパク、低塩、低糖類、高炭水化物、高食物繊維
五多五少:①たくさんの種類を食べ、単体食は少ない、
       ②消化のよい粥ものでかたいものは食べない、
       ③植物油が多く、動物性脂肪が少ない、
       ④量を多く食べずに少食であること、
       ⑤味が薄い食事が多く、塩が少ないことである。
この中で火麻は、主要な植物油として、山茶油(椿油)、ゴマ油とともに紹介されていた。

後は、心理状態がよいことも述べていた。仕事がゆっくりで忙しくなく、人々がやさしいこと、
テレビは見ない、お酒は少々、タバコは×、

これらの環境で2箇月ぐらい過ごすと、糖尿病、高血圧などの病気は治り、髪も黒くなる人がいるという。
今や健康長寿になるために中国全土から年間3000万人の観光客(保養を込みで)が来るという。


●夜は、台湾の自然食料理の先生が麻の実料理の実演・講義!!

南寧から私たちのツアーのバスに突然乗ってきた50代ぐらいの夫婦がいて、現地スタッフかな?と勝手に
思っていたら、これがその世界ではとんでもなく有名人だったのでびっくり!。

この范秀琴先生は、長年、自らも医師として働く中で、体調を壊し、自然食の研究を夫婦ではじめた方でした。
台湾の自然食業界のリーダーとして、いっぱい本を書いていて、商品開発もし、専門学校ももち、クリニック
で処方もしていいて、マクロビオテック、漢方、自然医学を東洋思想で統合したような感じであった。

その長年、自然食を追求した方がついにたどり着いた究極の自然食材が巴馬の「火麻」だったのです。
しかも、火麻の魅力(魔力ですね)に惹かれて、台湾から南寧に3箇月前に自宅を引っ越したほど!

巴馬の長寿が好む様々な雑穀類・野菜などのあらゆる食材の中でもっともエネルギーが高いのが、「火麻」

料理の実演では、火麻のエネルギーを目で見て実感できるように、オーリングテストをしたり、
試食では、火麻ワッフル、火麻豆乳、火麻ジュース、火麻ジャムなどをいただいた。
どれも、エネルギーを下げないように火麻を粗挽きしたものをベースした料理であった。

粗挽きの機械(ミキサー)も納得のいくものがなかったので自分たちで開発したという力の入れよう。


巴馬の人々は、火麻を石臼でひいて、それをお粥に入れて食べています。

范先生の名言
 「麻の実は、あらゆる食べ物の中でも最もエネルギーをもっている」
 「よい原料+よい料理法=よい健康を生む」
 「放射能のデトックスには、味噌と火麻がよい」
   ・・・火麻は放射能に直接聞くわけではないが、味噌と組み合わせるとよいとのこと。



●6月15日(水) 巴馬  百魔洞、百歳長寿村、火麻の畑見学

巴馬で最も有名な観光地が、百魔洞という大きな鍾乳洞の洞窟。
マイナスイオンたっぷりなため、保養に来た方が1日中滞在しているところでもある。
参加者のなかにはもっと手つかずの自然いっぱいなところを期待していた方がいましたが、
残念ながら周辺地域は、旅館やお店で開発ラッシュという感じ。
これも巴馬が人気が出てきている証拠ともいえる。



本来の長寿村はもっと山奥にあるのだが、観光用に百歳長寿エリアがあり、今回のツアー
ではここを訪問。
みんな、百歳長寿者とひとりひとり記念撮影。
握手してもらったら手の感触がなんともいえない柔らかな感じがした。

ツアー最年長の81歳の方がいたが、ちょうど104歳の方の息子が82歳で並んで写真を
とったのが面白かった。上には上がいるというのはまさにこのことだ!。



それから念願の大麻畑見学。
通常は、山の斜面地にトウモロコシと麻を混植しているのだが、新しくできた薬草園では、
平地のよいところに生えていた。みんな大麻草が大好きなので、記念撮影の嵐。
ホント、巴馬の風景は絵になるなー。




 通常はこういう斜面地に栽培されています!マリファナ成分も少ない低THC品種でした。


●6月17日(金) 寧波(にんぽう)へ 中国最大のアパレル会社 ヤンガー本社へ

16日は、予定していた川の遊覧船は、水不足のためなくなり、昼から次の場所へ移動。
中国は広いので移動に時間がかかる。巴馬に行くのも1日半、帰るのも1日半も取られる。

次の目的地は、事実上、世界最大のアパレル会社で中国ナンバーワンのヤンガー社の
本社へ訪問。日本の代理店であるヤンガートレーディングの北村さんのアレンジで今回の
企画が実現できた。

まず、訪問してド肝を抜かれた。
国会議事堂なみにでかい本社ビル。
ここの4つのブランドのひとつに HEMPがあった!素晴らしい。感動です。
  1)YOUNGOR
  2)MAYOR
  3)GY
  4)HANP(漢麻) 2010年からスタート。ヤンガー社では、HEMPのブランド名をHANPとしています。

2007年ぐらいからヘンプ事業をはじめ、雲南省に新しい工場を建設して、今では
トライアル栽培で、8000ヘクタール、約5000トンの繊維を生産。
そこから、シャツ、下着、靴下、バス用品など様々なヘンプの衣料品を開発していた。

栽培―糸ー生地ー服の一貫生産しているところがウリ。
そして、研究体制も中国人民解放軍が中心となっており、18あるプロジェクトの1つが繊維で、
ヤンガー社が担当。

中国人のセレブ層がターゲットとしている。中国って資産1億円もっている人が既に1億人いるようなので(笑)。
綿と比べて決定的に違うのは、
 1)農薬・化学肥料をつかない点、
 2)機能性(抗菌性、速乾性、通気性、UVカットなど)
綿と比べてまだ価格が3〜4倍高く、同じ麻類のリネン(亜麻)よりも2〜3割高い。
当面は、リネンと同じ価格帯になることを目標としている。

名言
「ヘンプは、(高温多湿な気候に住む)アジア人にとって最も肌に合う衣服となる。それゆえ、第二の肌と呼ばれる。」

 
 でかすぎる本社!!


6月18日(土) 寧波 ヤンガー社の直営店でヘンプの衣服を衝動買い(大人買い)!


なぜ、中国でヘンプが国家プロジェクトなのか?
それは、農民の収益向上が期待できるからである。

中国の田舎で、山や荒地でもたいていの場所で育ち、簡単に栽培できる。
農薬や化学肥料もいらずに短期間で生長でき、土壌改良にもよいから。
そして、ヘンプは、繊維、茎、種子と全て利用できる。
これらの特徴をもつ作物であるからだという。

また、中国は昔からヘンプの紡績技術はあったが、太い番手(糸の太さ)ものしかできず、
最近、その技術が進歩して、細いものものができるようになったから。

農民の収益向上と技術革新を結びつけることが中国の考えた国家プロジェクトなのである。

国家プロジェクトではまず人民解放軍から始めるのが手順。
それゆえ、軍が参画している。今では人民解放軍の靴下はヘンプ製である。

ヘンプの悪いところは?
 色を染めるのが難しい。栽培には、低THC品種に限定。農家は許可制(省によって異なるが)。
 「大麻」の文字イメージはやや悪い。だから漢麻という字を使っている。



この日は、メンバーでヤンガー社のヘンプ衣料が販売している直営店を訪問。
日本では販売していないヘンプ衣料品をお土産に買い漁った!。買い漁った!
通訳の方によると、22名で2時間で、日本円換算で約200万円(販売価格)を使ったらしい。

通訳の方によると比較的裕福な上海人で、大卒の初任給が日本円で月2万円。
私が購入したヘンプ100%生地のヤンガーの半袖シャツが16000円。

ここのお店は、中国人から見れば、超高級店。
いくらヘンプが大好きとはいえ、買いすぎでは???と思った。
私も皆さんに負けじと、ジャケット、シャツ、半そで2着で7万ぐらい使ったような、、、


●6月19日(日) 上海 市内観光 そして税関事件

あいにくの曇だったので、予定していた上海一高いタワーには登らずに、お茶を嗜み、骨董市場を訪問。
さて、今日はもう帰るだけ。

そういう油断したスキに、羽田空港に降りたら、荷物受け取りの場所で、麻薬捜査犬がウロウロ。
いつもと違うほど犬がたくさん!!!
直感で、「これは、私たちのツアーが狙われいる」と思った。

後で聞けば、先に帰った方のJAL便では全く麻薬犬はいなかったのこと。
税関にとっては、中山康直と行く巴馬ツアー=怪しい と映るのでしょうね(笑)。

それで、お土産に、熱処理していない生の麻の実を買って、持ってきた方が24名中5名いて、
税関の特別室に連れて行かれた。

麻の実は、輸入公表という規則で、発芽する種子の輸入が禁じられているため、お土産でもってきても
没収の対象となるのである。

今回は、特別室へ行った何人かが、ツアーで学んだ大麻のよさと、麻の実のよさ
熱心に訴えたが、下っ端の税関職員には馬の耳に念仏であったことが容易に想像がつく。

結局は、特別室行きとなったとある主婦の方の粘り強い交渉によって、巴馬ツアーが、単なる観光ツアーで
犯罪性が全くないことが証明することができて一安心。

けれど、羽田空港からみんなが出てくるのに5〜6時間かかった。

企画者の一人としてこの事件は反省するとともに、今後の巴馬ツアーの教訓となった。
後日、フォローとして旅行企画会社の方で羽田税関と打ち合わせて、巴馬の地域の事情やどのような
お土産が存在するかの確認なども再度していただいた。


 現地では、お土産物=火麻(スープ、お菓子、お茶、お酒など)商品が30種類以上もある
 火麻(麻の実)も量り売りされている。


●まとめ

巴馬の食事は、どれも美味しかった。麻の実が入ったお粥や豆腐が特に美味しかった。
ツアーの参加者は個性的でとても楽しかった。
ある意味、巴馬にいったことよりもよい出会いだったと思う。

実は、ツアーの次の日に巴馬を発見し、長寿村調査をした自然医学の森下敬一先生のところにツアー報告と
取材をかねて訪問。このときの詳しい記事となっているので読みたい人はぜひ一読を。(下記サイトを参照)

日本人の起源を訪ねて~巴馬と日本を繋ぐ麻の真実(前編):森下自然医学2011年10月号
日本人の起源を訪ねて~巴馬と日本を繋ぐ麻の真実(後編):森下自然医学2011年11月号

今回のツアーのビデオを参加者の一人が編集中。
できたらまたお知らせします。


旅行企画会社 ジャパトラ http://www.japatra.co.jp/
東京銀座・巴馬ロハスカフェ http://bama-cafe.com/
ヤンガートレーディング http://youngor.co.jp/
自然医学・森下敬一  http://morishita-med.jp/





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