ふぁーみんぐ通信01年9月
        中国の麻 〜2001麻類及び靭皮繊維作物国際会議に参加〜


2001年9月19日(水)~22日(土)まで中国の瀋陽(shenyang)で行われた2001中国瀋陽麻類及靭皮類繊維作物国際会議に行ってきました。そのときに見た中国の麻畑と会議の様子です。中国は、世界一の麻の生産があり、紡績工場もたくさん存在します。そんな生産基地からのレポートです。

●はじめての中国

世界に200以上の国と地域がある中で、一番人口が多く、潜在的な経済力が最も高い中国。私は、いままできっかけがなくて行ったことがなかった。今回、大麻に関する国際会議が中国であるらしいという話を聞いてから、ヨーロッパやアメリカより近いし、いってみようと決心していた。中国に行くには、ビザ(査証)がいるんだ!と全くの基礎知識なし状態。。。「地球の歩き方」を買って、一人で楽しい事前学習会を実施する。以前、中国大使館の方との会食でいっていた「上には政策あり、下には対策あり」の国。。。いったいどんなところかワクワクしていた。



実際は、この気持ちとは裏腹にチケットとビザが旅行に行く2日前まで届かなかったため、ホントにいけるんやろか?とハラハラしていたのだ。私が書いた「ヘンプがわかる55の質問」(通称:ヘンプ55)英語版と日本の黄金色の大麻繊維と美しい大麻和紙(栃木県粟野町産)の3点セットをかばんに入れて、いざ出陣。


●この会議は、何の会議?

 9月19日~22日に中国の東北部の中心都市、瀋陽(shenyang)で行われた麻の国際会議へ参加してきた。今年(2001年)、2月に韓国で行なわれた第1回アジア大麻産業国際会議とは、全く別の会議である。(お間違えのないように!)

この会議は、ポーランドに拠点がある世界大麻センターという組織が実質的に主催し、毎年1回の開催で今回が第4回目にあたる。エントリーした国を含めて、世界30カ国150名が集まるインターナショナルなものであった。

主催しているグループが「天然繊維研究所」関連の人たちとそのネットワークなので、繊維の専門家がたくさんあつまっていたし、その発表がたくさんあった。もらった分厚い論文資料集の表紙が亜麻(flax)の花の絵だったので、フラックスの話題が多そうなイメージであった。しかし、掲載論文の3分の2が大麻(hemp)であることを確認すると「天然繊維の研究分野でも大麻が注目されているんだな」と思った。



主催:中国潘陽市人民政府
    FAO 亜麻と麻類植物ヨーロッパ協力研究ネットワークセンター
協力:天然繊維研究所(INF)
後援:トン・シン・インテリジェントエンジニアリング社・潘陽天然繊維研究所・
    ヘンプテックストレーディング社(ポーランド)・遼寧省共産党
    遼寧大学・潘陽大学・Liaoning Institute of Cotton & Bast Fibres社・
    (順不同)

※日本からの参加者は、大麻大好きの変わり者5名でした。
  内訳は、20代:3名、30代:1名、40代:1名、全員男性でした。


●会議よりも麻畑!

会議の内容は、もらった分厚い論文集と全く同じ発表なので、途中で抜けて、麻畑を見に行こうという話になった。NPO法人ヘンプ製品普及協会さんが所有する麻畑が偶然?!にも国際会議があった潘陽市郊外にあったのだ。
会場のフェニックスホテルから車で1時間弱のところだ。日本人全員、会議をサボって麻畑へ。気分は、課外授業というところ。

トウモロコシ畑に隣接し、日本ではお目にかかれない広大な麻畑は、とてもすばらしかった。約4メートルに育った麻は、ちょうど花が咲き終わり、種子が成熟しているところであった。熟した種子をもぎ取って食べてみると「うまい!」。
やはり取れたては美味しかった。中国では、麻の実をすりつぶして豆腐をつくって食べたというが、食べすぎると頭が痛くなるのであまり食べない。



ここは麻を植える前は、とても植物が育たないようなゴツゴツとした土地だったらしい。しかし、麻を引っこ抜いて、そこの土を触って見ると水分を含んだやわらかい土であった。今年は、大干ばつで雨がほとんど降らない気候であったにもかかわらずである。麻の栽培が、土壌の物理性を改善したと考えられる。

江戸時代の農業書には、麻の栽培で荒れて痩せた土地を再生させることができると書いてある。この技術は、もしかしたら半乾燥地帯における緑化、沙漠化防止に貢献できるかもしれないと思った。例えば、植林する前に麻を植えたり、農作物を植える前に麻を植えたりするとよいかもしれないのだ。そうなると沙漠緑化に大麻が活躍という新しい分野が開ける。また、また魅力的なテーマを新発見♪♪♪
 
ちなみに、ここの畑で栽培されている品種は、中国の産業用大麻(繊維タイプ)で薬用タイプのものではない。中国には、大麻を喫煙する習慣や文化がないので、大麻に関する規制はない。ただし、今後、WTO(世界貿易機構)への加盟のことを考えると状況は変わってくるものと考えられる。上海などの大都会では、大麻喫煙にうるさくなってきているらしい。
※アヘン(植物のけしから取れる麻薬)は、昔から規制されている。



●ところで会議の中身は?

大麻に関する農業技術、バイオテクノロジー、繊維処理、加工、繊維産業全般それから、ヘンプから紙をつくる方法、繊維を利用した建築と自動車産業のための複合原材料、食品(ヘンプシード)の話がされていた。私自身が目新しい話として面白かったのが、次のレポートである。

大麻や亜麻を栽培して重金属に汚染された土壌の修復に関して(ポーランド)
→ウワサでは聞いていたが、研究論文としてはじめてみました。

大麻や亜麻の栽培、加工、利用における経済性(ドイツ)
→ドイツでは、EUの補助金が年々減少するなかで、1999年をピークに大麻栽培が減少している問題があることをはじめて知った。
大麻の収穫物に影響する要素のフィールドスタディ1997~1999(カナダ)
→インターネットで見たこともあるレポートだが、コンパクトにまとまっていた。

あとは、麻の実(ヘンプシード)の栄養分析やアミノ酸分析やオイルのレポートもあったが、「麻の実クッキング」という本をまとめた私にとっては、特に目新しい話題はなかった。

又、日本人の発表はなく、ただ我々はその雰囲気を感じに参加したという感じであった。かなり観光客気分?!であったが、会議参加費200ドル(2万4000円)はきちんと支払いました。

 会議初日に行われた麻服のファッションショー

●中国の大麻会社の実験所に行く。

会議の3日目終わりにオプション企画として、大麻や亜麻から製紙(紙をつくる)の研究開発をしている会社にいった。そこの会社の畑には、麻が生垣のように植えられていた。ちょっとびっくり。

建物の中に入ると理科の実験室のような場所で紙をつくるための実験機械がならんでいた。お土産にここでつくった大麻パルプをたくさん頂いたが、ホテルに帰ってヘンプ製品普及協会の方に聞くと「それはうちが資金を投じてつくった紙だ!」とのこと。ヘンプ55の第3版は、本文にヘンプペーパー(麻:30%、再生紙:70%)を使用しているが、その大麻パルプ製造実験に今回訪問した大麻会社も関わっていたことを知った。




●研究進めど、ビジネスはこれから

今回の会議に参加して、一番驚いたことがあった。それは、日本の大麻産業化が世界に比べて超遅れていると思っていた価値観がガラガラポンと崩れたことだ。ポーランド、オーストラリア、スイス、南アフリカ、カナダ、中国の方と主に話す機会があったが、どこもこれからビジネスとして展開していきたいというところであった。一部の成功例を皆が引用しているので成功例がたくさんあるように見えたが、それは幻想に過ぎなかった。

私自身がプロデュースした大麻ビールが地ビール会社の規模としては、軌道にようやく回ってきたという事例は、世界に誇るべき成功例らしい。また、レストラン麻が3年前から営業している事実もすごいことらしい。四季折々の食文化と世界中のあらゆる食事が楽しめる日本は、大麻料理、食品分野でもすでに最先端にあると実感した。多くの外国人がレストラン麻のパンフレットの料理メニューなどを質問してきた。

特にオーストラリアは、2001年11月から法律が改正されて、大麻の栽培が正式に解禁され、産業化がはじまる。しかし、そこまでいくのに研究を進めつつ、行政との交渉に7年間もかかったらしい。7年間、闘ってようやく産業化解禁にこぎつけたパワーに敬服するとともに、いやー、日本もそれくらいがんばらないとダメなんだな~。と思った。行政にダメなものはダメ。といわれて「やっぱり日本ってダメだんだなー」というマイナス志向こそが、我々の克服すべき思考回路かもしれない。

3泊4日の短い期間で多くの国の人と話すには、とても短かったが、麻の葉模様の意味、日本の伝統的栽培と黄金の繊維、七味唐辛子の宣伝、大麻和紙のすばらしさ、ヘンプ55英語版のプレゼントを通じて、日本にも大麻有り!というアピールを少なからずできたものと思われる。
 日本は、研究と栽培が全くの八方塞がりであるが、それ以外の文化やビジネス分野では、やり方次第でいくらでも世界に発信できるだけの力があると実感した。

最後に、誘っていただいたヘンプ製品普及協会の方、中国語及び英語の通訳をしていただいた方、会議主催者と中国・瀋陽市にありがとう。謝謝。

※アメリカでのテロの関係でアメリカ人の参加者がいなかった。そのため、
 市場規模の大きさと研究開発で一番進んでいるアメリカの情報がなかっ
 たのが少し残念だった。






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