ふぁーみんぐ通信10年2月号
        学校の先生が大麻草を理解するための12カ条
          〜子どもたちに伝えたい基礎知識の巻〜




第1条.大麻草は、麻薬ではなく、ただの植物です。

 詳しくは「大麻ヒステリー」光文社新書を読みましょう。
 

2条.大麻草は、繊維をとる品種と薬になる品種の2つがあります。
  参照HP→ 麻、大麻草、ヘンプ、マリファナ、大麻 イメージと定義の巻


第3条.繊維をとる品種は、神社の鈴縄、凧糸、下駄の鼻緒、麻織物、横綱の化粧回し
 弓弦、花火の火薬、茅葺屋根の材料、七味唐辛子の一味など日本文化を支える
 植物として栃木県などで栽培されています。

   参照HP→ 復活したもの&復活させたいもの 伝統みらい素材の巻


第4条.薬になる品種は、猛毒・有毒だと1930年頃に考えられてアメリカ主導で
 世界的に規制された植物です。。

 詳しくは「大麻入門」幻冬舎新書を読みましょう。


第5条.日本で大麻草が規制されたのは、第二次世界大戦後です。
 戦争に負けて占領されていたので、アメリカの薬物政策に従っただけです

  参照HP → 1948年大麻取締法制定時の国会審議録


第6条.薬になる品種が、猛毒・有毒だと思われいたが、その後の研究により、
 コーヒーのカフェイン並みで、合法化されている煙草やお酒の方が危険で、
 社会的損失(肺がんや交通事故)が大きいことがわかっています。

  詳しくは「マリファナの科学」築地書館を読みましょう。
  気楽に見たい方はPDFファイル参照 → カンナビス(大麻草)はアルコールより煙草より害が少ない


7条.今の中高生・若者に大麻草が必要なのは、脳内マリファナ(内因性カンナビ
 ノイド)の分泌が足りない可能性が高い。

  参照記事 脳内マリファナを医療を活かす 日経サイエンスより
  参照HP → 脳内マリファナ(エンドカンナビノイド)の役割の論文


第8条.分泌が足りなくなるほど、ストレス社会・不安に悩む中学生・高校生が
 多いのかもしれない。

  参考HP→ 児童・生徒のストレスの研究動向
  大麻意識調査:1割「ストレス解消に良い」大学生らに誤った認識広がる 毎日新聞2009年5月9日付
   → これは現在の法律的には誤った認識だが、薬理学的には正しい認識の可能性が高い。


第9条.大麻草の成分には、抗不安作用があり、精神安定させる効果が
 経験的に知られています。西洋医学では、精神疾患系に有害・無害を含めて盛ん
 に研究されているテーマの一つ。

  イギリスのGW製薬は、大麻草の抽出物からうつ病の薬で特許を取っています。
  ちなみにこの会社は、大塚製薬と共同研究して、アメリカで大麻草を使った
  ガン疼痛薬の臨床試験をしています。


第10条.大麻草はただの植物にも関わらず、使ってしまたらそれは悪いことだ!と
 一方的に親・警察・教師・マスコミ・行政・弁護士が上から目線で語るのが一番の問題。

  参照と本 → 思考停止社会


第11条.第1〜9条のことを議論して、本音でこの植物を語らない限り、子どもたちから
 大人の世界は信用してもらえない。

  大人が信用を損なった事例 → 日本の公的大麻情報の実態


第12条.この手の議論ができない日本は、沖縄基地、原子力、外国人移民、CO2削減、
 等の難しい問題に対応できる能力が著しく低いと思うのは私だけだろうか?





●子どもから聞かれるよくある素朴な質問に対して

<質問>
オランダなどのヨーロッパ、カナダやアメリカの一部で個人が大麻を扱うこと(マリファナを吸うこと)
に、違法にならないとインターネットで見て知りました。
ではなぜ日本は、大麻に対して他の国と比べて、厳しく取締されているのでしょうか?

<答え>
一言で言えば、刑事政策の考え方が違うからです。逮捕する基準が違うからです。

オランダ等では、非犯罪化論(Decriminalization:他人や社会に迷惑をかけてい
ないのに、宗教や倫理的な理由で犯罪行為とされている行為については、犯罪行
為にしないで自己責任の範囲内で対応させようとする考え方)が刑事政策として
採用されているからです。

ヘロインなどのハードドラッグの蔓延を抑えるためにやもえずに大麻を実質的な合法
化したという話が日本でよく紹介されていますが、全く根拠のないことです。→ こちらを参照

この非犯罪化論を採用する理由は、一度犯罪者になってしまうと、前科者というレッテルが
貼られたり、刑務所に入ることで悪い仲間と知り合ったり、悪いことを覚えたりして、更生が
難しくなり、再犯を繰り返すことになります。そうなれば、当然、そのつけは社会に跳ね返っ
てきます。そこで、そのようなことを防ぐ為には、極力犯罪者を作り出さないようにすることが
一番だからです。

残念ながら、日本の刑事政策分野では、この非犯罪化論はあまり余り受け入れられていません。
更に、日本の裁判所の立場は、大麻有害論(最一小決昭和60年9月10日判例時報1165号
183頁、最一小決昭和60年9月27日裁判集240号351頁)の立場を取っているため、
日本では大麻は禁止とされています。

ところが、この大麻有害論については、反対論(加藤久雄『ボーダーレス時代の刑事政策[改訂版]』
有斐閣、1999年、P27〜参照)があります。

「私は,大麻の非合法輸入,輸出,営利目的の譲渡,譲受などを刑罰で厳しくコントロールする
ことには反対しないが,単純「所持」・「自己使用」にまで5年以下の「懲役刑」でもって処罰する
合理的根拠」はどこにあるのだろうかという疑問をもっている。そして、「被害法益」がはっきりし
ないし,「社会倫理的被害」の保護は刑罰になじまないと言う立場から,基本的には,
「大麻」の単純所持と自己使用に限定して解禁すべきであると思っている。」
(前掲著書のP25引用)と主張しています。



●まとめ 大麻草は、子ども(生徒)とっても大人(先生)にとってもよい学習教材

大麻草について考えるというのは、日本の文化、海外の文化、法律と薬物、
日本の常識と世界の常識の差、異文化への理解の醸成になるのです。
教える先生の側の力量が試されるテーマですので、しっかり理解して、道徳やホームルーム
での授業の教材として活用したい場合は、ぜひご連絡を下さい。

特に、ディベート(討論)のテーマには最高の教材です!

以上





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