13年2月号
       第3回アジア大麻産業国際会議の参加報告
         ~日中韓朝の東AS
IAは、iHEMPの巻~

         



●5年ぶりの国際会議!


NPO法人アジア環境保全センターの主催による大麻産業の国際会議が5年ぶりに開催された。東アジアの国際情勢により開催が危ぶまれたがなんとか無事に開催できた。

第1回 2001年 韓国・安東市
第2回 2008年 韓国・東海市
第3回 2013年 中国・北京市

日程:2013年2月20日~24日 
参加:日本14名 韓国5名 中国8名
    北海道、宮城、埼玉、東京、横浜、滋賀、福岡、宮古島 
    女性7名、男性9名
会場:北京市 前門建国飯店(右写真)★★★★四ツ星ホテル 
 



国際会議の様子、中国のヤンガー社の大麻な紙袋が貰えた。この袋にお土産と資料が入っていた!


●日本からの発表者

日本からの発表は、今回の参加呼びかけ人の3名。私の発表は、国産原料の国産麻商品の紹介と大麻草と放射性物質の挙動という内容であった。通訳が入るのでいつもの1時間半講演のように長々とは言わず、15分でコンパクトにお話した。北海道と沖縄・宮古島と両極からの取り組みは、他の地域の先進事例であり、全国的に注目されている動きである。それぞれの活動はリンク先に詳細報告あるのでそちらを参照してほしい。。


1、テーマ:北海道における産業用大麻の現状と将来展望
       菊池治巳:農業活性化研究所代表、農学博士 
  北海道ヘンプネットの活動はこちらを参照 → http://www.hemp-revo.net/report/1204.html


2、テーマ:日本における大麻産業の現状と展望
       赤星栄志:日本大学大学院総合科学研究科研究員、博士(環境科学)


3、テーマ:HEMPと有用微生物にフォーカスすると豊かな未来が見えてくる。
      伊香賀正直:宮古島産業用HEMP促進プロジェクト代表
宮古島の活動はこちらを参照 → http://www.hemp-revo.net/report/0906.html



●中国からの発表者


1、テーマ:中国の漢麻産業の歩みと現状、未来への挑戦
  新敏:軍用漢麻材料研究センター 総工程師、工学博士、大佐
  


中国には様々な大麻の呼び名がある。今回の国際会議では漢麻(かんま)と統一している。

漢麻栽培しているところは、通常農作物を耕作するのに適していない山腹地、荒地、塩分(アルカリ性)を含む土壌をターゲットにしている。不良耕作地は、全耕作地1億haの3分の1を占めており、大きな問題となっている。漢麻の栽培は難しくなく、成長スピードが早く、その土壌改良に役立つために注目されているのだ。

中国国家は、砂漠化問題、食料不足、石油不足、森林不足、原料不足、沿岸部と内陸部の格差問題、土壌問題、水枯渇問題、二酸化炭素対策などの様々な問題に対して「漢麻」を通じた問題解決を模索しているのである。さらに、「漢麻」を原料とした固有の産業技術を開発し、国家競争力を強化することを大きな目標としている。

漢麻の研究は、2000年初頭に国策としてプロジェクトが発足し、2003年に衣料分野の開発をヤンガーグループが担うことを決定し、2007年4月に漢麻専門会社である「漢麻産業投資控股有限公司」を国の軍用漢麻資材研究センターと共同で設立したのである。第一次投資金額は、2億元=30億円。5年間で20億元=300億円の投資を計画しているのである。



発表であった経済的利益は、上記のように計画されている。現在は1万haで年間6000千トンの大麻繊維を生産し、様々な製品の研究開発に励んでいるとのことであった。とにかく話がでかい!、日本の全大麻栽培面積5ha(2010年)とは、規模が違いすぎるのである!!



2、中国の漢麻 新材料、紡績産業とその応用 
  発表者:高明斎:漢麻産業投資有限公司 常務副総社長



さて、次の中国の発表者であるヤンガー社のお話。ヤンガー社は、中国でアパレル業界でNo.1のシェアを占める超優良企業である。そこが大麻衣料の製品化に取り組んでおり、その工場が中国の雲南省にある。




それで、30億円の投資して開発したのが、ヘンプ糸では実現できなかった極細の糸なのである。これまでは36Nmが限界だったである。



「漢麻」繊維の特徴は、多孔質構造にある。これによって吸湿性と発汗性を高めて、調湿性を保つのである。自然な状態では漢麻繊維内に多くの酸素を取り込むことになり、それが酸素を嫌う菌が生存できない環境をつくっているのである。さらに、漢麻繊維が有するフェノール系物質や有機酸や無機塩が細菌への抗菌と抑制作用を持つ。よって、消臭性も強力に有するのである。

講演では語られなかったが、こんなに有用な機能をもつ天然繊維が普及してこなかった理由は、原料そのものが不足していたという課題があった。しかも、質の高い紡績糸にするには、収穫したヘンプ茎のうちたったの4~5%しかなく、栽培の絶対的な量を増やさないと実現不可能な世界なのである。ヤンガー社ではこの問題をクリアしたのである。



また、ヘンプ繊維は、繊維長のバラツキが多く、表面が平滑であるため撚糸性に乏しいので、細い糸を製造するのが難しいという課題があった。それを今回の投資開発でクリアしたのである。そして、中国の他の中小紡績会社にはできない栽培から生地までの大量一貫生産体制を確立することで、原料不足を解消したのである。


     
●韓国からの発表


1、テーマ:韓国における大麻の染色について
  発表者:崔 玉子:韓国名匠512号(染色部門)

韓国からは日本の人間国宝&伝統工芸士に相当する名匠という称号をもった方からの発表であった。手織りで手染めしている様々な作品には韓国の伝統の力強さを感じた。写真の主催者の郭さん(手前)と奥の崔さんが手に持っているのは、ベストヒットしている足踏みマット。中に丸い玉が入っており、足で踏むと気持ちよく健康になれるという商品なのである。

今回の国際会議では参加できなかった韓国中源大学の金斗年法学部教授によると、韓国では元々、死装束として大麻布が伝統的に使われてきたが、葬儀に関する法律が変わったため、土葬ではなく、火葬が8割を占めるようになり、大麻布の需要が落ち込んでいるとのことであった。5年前は110haあったのに、今では55haで175戸と激減しているとの報告があった。日本の大麻取締法よりも、厳しい現状(種子が食用に使えない)があり、産業用大麻の無知な状態を国際的な連携で解消していきたいということであった。



●北京の空は??

さて、国際会議に行く前は、2月に行ったら猛毒ガスPM.2.5でたいへん!と皆さまに脅されていました。それで、3・11のときに放射性物質対策で購入した住友3Mのアメリカ軍規格N95という0.1~0.3ミクロンを95%カットできるマスクを持参。1個1000円ぐらいする代物で、北京空港でみんなで大げさなマスクをしてパチリと写真をとったのが下記の様子。




しかし!!超快晴で拍子抜けー。どう考えても東京より空気がきれいだった(笑)。市内で中国人がマスクしているのを見かけなかったのである。普段もマスクしている人は皆無で、PM2.5問題はどこへ??という感じであった。





●ヤンガーの直営店へ

さて、2日目は、ヤンガー社の北京直営店を訪問。ショッピングセンターの1Fに漢麻世家という看板がある。
このお店には「HANP」という名前のHEMPブランド衣料品があった。





靴下、下着、寝衣、シーツ、スーツ、クッション、タオルと様々なアイテムがあった。
気になる値段は、スーツが日本円で18000円ぐらい。でも中国の上海の大卒初任給って2万円なんで、中国人から見たら超高級ブランド。ヘンプ衣料を身につけるものは、成功者の証!とのことである。

衣料品だけでなく、壁紙(布壁紙)にも力をいれていた。そして、そのブランドがiモード、iPadに倣って?iHEMPだったのである。




●ホントに残念だった漢麻センター見学キャンセル

今回の国際会議の目玉だった軍の施設である漢麻センターの見学訪問が諸事情により3日前にキャンセルになり、行くことができなかった。日本のヤンガー社の資料で公開されているものを一部ここでご紹介。





漢麻繊維の防弾チョッキやヘルメット、防毒マスクってもろに軍用品。
軍の非常用携帯食に麻の実ナッツバーってすごい!



●最後は北朝鮮の平壌料理屋へ

それから、3日目は北京市内の世界遺産観光をして、夜に市内にある平壌料理屋に行った。ここでは、これまでの国際会議の総括と店員による北朝鮮の素敵な舞宴があった。





●参加した感想

本当に開催出来て良かった。主催者、発表者、参加者のみんなに感謝したい。東アジアって何かと政治的・経済的に摩擦のある地域だが、民間レベルでの国際会議の意義は、ずばり、ASIA=iHEMP、持続可能な社会と健康的な生活には、大麻草が不可欠であるという認識をアジアでから発信していこうということであった。アジアの字の中にASAがあり、ヤンガー社の壁紙のブランド名にiHEMPを使っていることに感銘を受けた。日本人参加者もとても素敵な方々の集まりで、この国際会議のタイミングでしか会えない感じがした。東アジア4カ国の状況打開のために、「大麻」をキーワードとして国際的連携をさらに発展していくことが望まれている。そのために自分には何ができるのか?地道だが継続は力なりの精神でこれからも取り組んでいく決意をした。





日本にも麻福というブランドで、ヤンガー社の代理店がありますので、
靴下などの商品を日本で購入したい場合はこちらもご紹介。


以上


   




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